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更新日 2023-02-02 | 作成日 2021-01-13

12月の特集

労務について

今回は65歳までの雇用義務化やパート等の無期雇用化についてお話をしましょう。

人件費に影響を及ぼす制度改正について

 高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用が義務化されました。即ち、来年(25年)4月から、60歳定年後も社員から希望があれば、原則として希望者全員65歳まで雇用をしなければならなくなります。

 それと、労働契約法も改正されパート・アルバイトも5年以上雇うと無期雇用契約をしなければならなくなりました。

 高年齢者の継続雇用、パートの社会保険加入拡大、契約社員の無期労働契約への転換等人件費の増加、固定化となる傾向になり今後の経営課題として重く重くのしかかってきます。因みに表にしてみますと以下のとおりです。

65歳までの雇用の義務化について

 現行では65歳までの雇用確保のため、①定年制の廃止、②定年の引き上げ、③継続雇用制度のうちいずれかの導入を義務づけています。このうち、③は継続雇用の対象者を限定する仕組みが以前は認められていました。

 しかし、来年(25年)4月1日からは継続雇用の対象者を限定する仕組みを廃止し原則として
(注1)、継続雇用希望者全員を雇用することになりました。

 但し、完全義務化までの経過措置が設けられています。経過措置の内容は以下の如くです。
(注1)心身の健康状態の不調により業務の遡行に耐えない人などは例外とされます。

勤続5年超のパート社員の無期雇用化について

 5年超(注2)のパート社員も、本人が希望すれば会社は無期限に雇用しなければならなくなりました。また、有期雇用契約を繰り返し更新することで実質無期限と同じになっている者は合理的理由のない限りエンドレスです。24年8月10日施行済
(注2)改正法の施行前に既に開始している有期雇用契約は5年のカウントに含めません。

厚生年金保険料の上昇について

 厚生年金保険料も 平成16年改正で平成29年まで毎年上昇です。現在16.766%から平成29年では18.3%までとなり会社・社員と折半となっています。これを表にしてみます。


税務について

今回は来年1月からスタートする復興特別所得税(以下、復興所得税)の源泉徴収の仕方についてお話をしましょう。

復興特別所得税について

 復興所得税は個人所得税額に2.1%の税率を乗じて計算します。即ち給与、報酬料金に対してです。要は今までの源泉税と復興所得税とを合計して給与等から差引き、翌月10日までに納付します。表で表しますと



 25年1月から給与等の源泉徴収税額表が改正となります。この税額表はもちろん復興所得税を含んでいます。

報酬・料金に対する源泉税の扱いについて

 (税理士、司法書士等に支払う)報酬・料金に対する源泉税も同様の扱いとなります。即ち支払税額が100万円以下であれば10%、100万円を超える部分については20%を徴収していますが、来年1月からは各人別に計算がされる必要があります。即ちそれぞれ、10.21%、20.42%の税率を使います。表にしますと


 仮に復興所得税を失念して源泉徴収しないとしても、この税の徴収義務は免れません。因みに請求書スタイルは以下の通りです。

利子等の受け取りについて

 来年1月以降に受け取る利子等についても注意が必要です。表を参考にしてください。

年末調整について

 24年1月1日以降加入の保険契約により「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」に加え入院・通院等に伴う給付部分にかかる保険料に対し新しく「介護医療保険料控除」が出来ました。それに伴い、控除適用限度額が変わります。

 従って、24年1月1日から契約日(更新日、特約付加日)を基準として「旧制度」「新制度」の2つが並存することになります。平成24年中に加入又は更新、中途付加等により契約内容を変更した場合は新制度の対応となります。


経営について

年末は資産の整理をしましょう。

年末にやっておきたいこと

年末は1年の終わりの時です。事業を営んでいる人達はこの1年を振り返り、総決算をする必要があります。

売掛金について

まず売掛金から行きますと、せっせと売上げても回収にならなければ何にもなりません。未回収の結果資金繰りに窮し、それこそ倒産しては何の意味もありません。まずどれだけ未回収か、どうすれば回収となるか早急に検討し具体的手法を見出していく必要があります。

在庫について

次に在庫についてですが、いわゆる月末の商品がどれだけあるか常に把握する必要があります。何故ならば商品売買をしているところでは正に売れている商品か、売れ残っている商品かを正確につかむ事によって損益に直結し、いわゆるもうけの具合がリアルに分かるからです。従って、在庫を調べ、数は合っているか、仕入値はいくらか、いつから滞留しているか、売れ筋商品がどれだけあるかによって会社の命運を分けることの判断材料になります。よって、在庫状況がクリアになっていれば場合によっては値引きや年末セールで売ろうかとの判断も出来ます。

その他の資産について

使っていない車両、備品があればこれを機会に破棄処分をしましょう。
土地、有価証券はどうですか、評価は下がっていませんか。下がっているものでも上がる見込みがあるものは保持してもよいでしょうが、この御時世よほどのものでない限り今後間違いなく含み資産にならないものは早急に処理すべきです。と言うのは更に含み損の増加となり、企業経営上マイナスの要素しか生まないからです。

チェックしてみましょう

今まで滞留債権、不良在庫、未利用機械等、不良不動産、不良有価証券を見て来ました。全てこれらは企業経営のマイナス要素以外何物でもないので、全て「うみ出し」をし、一掃処分し、健全な体質にすることが今の企業経営上重要な意味を持っています。以下表にその辺のところのリストを用意しましたので一度チェックすることをお勧めします。

11月の特集

税務について

今回は身近な話しであるパートの税金についてお話しをしましょう

○皆さん御存知と思いますが、パート収入(※注1)が103万円以下であれば所得税がかかりません。というのは、給料収入から自動的に計算する必要経費分と基礎控除38万との合計額を差し引くと所得が0となるからです。いわゆる所得税0という「103万円の壁」と言われているものです。ポイントとして、収入と所得は違います。計算式で示すと、

◎ 収入-各種控除等=所得 となっています

(※注1)通勤交通費が毎月支給されている場合は、1ヶ月10万円まで収入に含める必要はありません。

○では、妻のパート収入金額が103万円を超えるとどうなるか?本人にまず所得税がかかります。次に夫側では、配偶者控除が使えなくなります。但し、妻のパート収入が141万円未満までですと、夫側で一定の条件はありますが、下の図にある金額が別途配偶者特別控除額として使えます



○パート収入103万円以下であれば、所得税が出ない事は解ったが住民税はどうかというと、100万円以下であれば所得割はかからないが、市区町村によっては均等割(標準として年額4,000円)だと、100万円以下、96万5千円以下、93万円以下であればかからないというようにまちまちです。



○社会保険側からみると、パート収入130万円以上ですと、夫の社会保険の扶養家族からはずれ妻自身は、自分の住んでいる市区町村の国民健康保険、国民年金に加入となります。妻の手取り金額から見ると由々しき事となります。尚、社会保険でいう年収とは、1年間の収入見込み額の中に通勤交通費等も含まれます。


経営について

新たに公表された中小企業向け会計ルールである中小企業の会計に関する基本要領について説明しましょう

○昨今、日本経済の弱体化が進み、特に中小企業の元気のなさが目に余る状況となり、ここで日本経済と中小企業をもう一度元気にするため、会計ルールを財務、経営力に力点をおくように変更いたしました。要は、経営に役立つ決算書を作ろうとの事です。

○この会計ルールによって、日々の財務もしっかりと把握し、同業他社との比較も出来るようにして、問題点をリストアップし、経営改善に役立てるようにし、強いては金融機関にも信頼を勝ち取り、資金調達力も増していこうとの考えです。

○会計ルールの変更は会計を経営に役立たせる事にあります。即ち、

1.適時・正確な記帳をする
2.決算書の信頼性を高める 
3.財務情報を有効に活用する

1.について、年1回会計帳簿を作成するとの事ではなく、毎月タイムリーに作成する事が事業の変化を速やかに把握できる事になり、即対策がとれるというものです。

2.について、会計事務所(第3者)の介在によって、より信頼性を高める必要があります。

3.について、いわゆる月次決算をして資金繰り情報等を活用し、管理会計も駆使すれば、必ずや事業業績向上に役立つ事になるでしょう。そのためには、日頃月次決算の発想の下、常に月次試算表に注視し、どうすれば経営が改善されるかの視点を、絶えず持つ事が必要となります。ちなみに、財務、経営力を高めるにはどうしたらよいかを表にしてみました。


労務について

今回は労務のトラブル事例に学びましょう

◎事例として例えば
・酒に酔った状態で出勤する。
・仕事中に居眠りをする。
・酒に酔った状態で他の従業員と長電話する。 ようなケースです

例えば、体調不良で長期欠勤する社員がおり、勤務状態に問題があるので、社長から上記の件に対する改善策を指示しました。ところが、一向に改まらない中、大口の取引先へ出向く件をすっぽかしたため、クレームがつき、その社員の解雇を要求してきました。このような状況のため、会社はその社員を就業規則に基づき、普通解雇事由に該当するとして解雇しました。

★ところが、その社員は不当解雇として損害賠償を請求してきました。裁判となり、結論としては、会社が負けてしまいました。

★なぜでしょうか?社員の方が一方的に悪いように思いますが、そうではなかったのです。

★ポイントは、会社側は解雇する前に注意や指導、警告を繰り返し行い、懲戒処分、降格等により、社員自ら改める機会を与え、その結果、状況が変化しない事を見極める必要があったのです。いわゆる、会社側の努力度が大変に必要であったのです。という事は、会社側に忍従を強いられる結果となっています。使用者側としては、散々迷惑をかけておいて、今さら何だ!との思いではありますが…。


10月の特集

税務について

今回は会社と社長との金銭等の貸し借りについてお話しをしましょう

○同族会社の社長の場合、会社と社長個人との間でよく資金の貸し借りが行われます。昨今は特に、経済状況が厳しく会社の資金繰りが悪いために、どうしても手っ取り早いところで、社長個人からお金を借りる場合があります。この場合、本来なら金銭消費貸借契約書を取り交わす必要があります。なぜなら、個人、会社は別存在だからです。

○逆に、会社が社長個人にお金を貸す場合もあります。この場合は、金利の問題も出てきます。

○では、税務ではどのような扱いになるのでしょうか。会社、社長個人間の貸し借りの際は、理由等を株主総会や取締役会の承認決議を得て、議事録完備の下「金銭消費貸借契約書」を取り交わします。この書類には、表1のような内容を明かして、保存しておかなくてはなりません。

≪揃えておく資料≫



○具体的に、会社が社長から借りる際の利息は無利息でもかまいませんが、利息を払う場合は一般的に適正と判断される利息よりも高すぎますと、その高すぎる分は社長給与となり、所得税が課税されます。



○逆パターンの社長が会社から借りる場合は、社長は会社へ利息を払う必要があります。無利息だったり低すぎたりした場合は、その低すぎる分が社長への給与となります。



○長期間、未精算の社長への仮払金はどうかとなります。これはずばり、税務調査で社長への貸付金か給与とみなされる可能性大です。これは金融機関からみると、現金化できない不良資産、社長の公私混同等マイナス評価をされますので要注意です。




経営について

今回は「中小会計要領」についてお話しをしましょう

○平成24年2月1日、中小企業の会計ルールである「中小企業の会計に関する基本要領」が公表されました。要は、中小企業の経営強化を促進するための、国際会計基準とは無縁の中小企業向け会計ルールです。

○中小企業の直接的利害関係者は金融機関と課税当局なので、会計ルールはそれらにターゲットをしぼり込んで、決算書を作ろうとの事です。

○中小会計要領の背景は、中小企業を取り巻く状況が人口減少・少子高齢化等による国内需要の減少、アジアをはじめとして新興国の勃興、国内大企業の海外移転等により激変しており、自立的な中小企業を目指さなければ、消滅の道を辿るのみとなります。

○そのため、中小企業の戦略的経営力(注1)をつける他にないのです。

(注1)戦略的経営力とは…

・財務経営力(経営状況を把握し、経営計画を立案する能力)
・資金の確保・調達力
・成長のための知恵・知識・ノウハウ
・国際競争に耐えうる技術力・人材

ここで特に強く強調すべき事として、財務経営力と資金確保・調達力をつけるべきです。即ち

①経営支援の担い手の多様化・活性化(中小企業経営力強化支援法として成立)   
②経営と金融の一体的支援
③財務経営力の強化

これらをやり遂げる一定のルールとして、中小会計要領が必要なのです。

○そもそも、中小会計要領は ①内部統制なし ②会計担当者は少数精鋭 ③課税当局を意識した会計処理をしている企業向けに考えられています。

詳細を記すと



○もちろん記帳の重要性は注視しています。要は、生のデータをタイムリーに把むには記帳が是非とも必要です。

○最後に、経営者はこれらの会計ルールで作成された決算書を読みこなし、データを自分のものにして、金融機関・課税当局に正確に我が経営をきちんと説明する能力を養わなければなりません。上記の事を一覧で表現してみると下表のようになります。




労務について

今回は通勤・業務にマイカー利用を認める場合の注意点についてお話しをしましょう

○地域の交通事情や業種・業態により、社員がマイカーを通勤や業務等で使う場合がありますが、交通事故を起こしたら会社も連帯責任の責を負い、賠償責任に問われます。従って、事故防止のため社内規定を完備し、守らせる必要があります。

○マイカー利用は許可制にし、利用規定も完備する必要があります。対応として

①マイカーの通勤・業務利用は一切御法度
②マイカーの通勤・業務利用を認める
③マイカーの通勤・業務利用は会社の許可制とする

会社としては、事故にあった場合、使用者責任、運行供用者責任(人身事故の場合)の責を負う場合があります。よって社内にルールを決め、これらを守らせるしかありません。その際の注意点として



○マイカー利用規程に織り込む内容として、
①自動車保険加入の義務づけ(具体的には、自賠責はもちろんの事、任意保険にも入れさせる)。②燃料費等の駐車場利用について定める。③無免許運転、飲酒運転等の禁止事項を設ける。最後に、④運転報告書を提出させる。など…

①についての規程例として
<規程例>



③についての規程例として
<規程例>



◎尚、マイカー利用許可申請書兼誓約書の例は下記の通りです。




特集:消費税の増税に対応しよう

平成24年8月10日の夕刻、参院本会議で民主、自民、公明党などの賛成多数で、消費税増税法が可決成立しました。いよいよ来たなとの感じです。2014年4月1日より8%、2015年10月1日より10%へと2段階で引き上げられる事になりました。表1に記載されていますが、家計へのダメージは相当なものがあり、増税となった時は主婦の8割までが、出費を抑えるとの事です。今後、給料は上がらず税・社会保険料関係の負担は増えていくばかりで、生活に余裕がなくなり経済的困窮者がどんどん増えていくものと考えられます。

(注)2011年と16年を比較した増額分。
40歳以上の夫婦と子ども2人世帯で夫婦の1人が働くケース、世帯年収は税引き前。大和総研の試算

また、事業者は増税になった分だけ、価格転嫁をしなければならないのだが、厳しい経済状況下にある中小企業(年間売上高5,000万円以下)では、日本商工会議所の調べによると「価格転嫁は困難」と訴えている。と言う事は、消費税倒産も次々生じるという事を意味しています。従って、少しでも倒産を減らすべく増税前の現在で予想される影響等を洗い出し、万全の備えをしておく事が必要と考えられます。

○まずは、消費税の増税時期を表2で表現します 

※消費税率の引き上げに関し、経済状況の好転について、名目及び実質経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め必要な措置を講じるとしています。

○但し、増税の際に配慮される事項として、以下の点が列挙されています
-表3-【消費税増税に伴い検討される事項】
・消費税増税後の住宅購入者の一時の税負担増加に対する平準化・緩和対策
・医療機関等の高額の医療設備投資などに係る税負担増加に対する対策
・低所得者層の負担率緩和のための給付付き税額控除制度や軽減税率の導入
・簡易課税制度のみなし仕入率を実際の仕入率の水準に近づけるように縮小

○この増税の時期に合わせて、免税点制度の特例と中間申告制度の見直しも行われます。
1つ目は、今まで親会社が資本金1,000万円未満の子会社を作っても、設立から2年間は課税事業者にならずに済んでいましたが、今度は課税売上高が5億円を超える親会社等が設立した子会社等(親会社が株式等の50%超を直接・間接に保有)はこの2年間免税との措置がない事となります。これは26年4月1日以降に設立される新設法人から適用となります。細かな改正があるので、実務家としてはうっかりミスにならないよう気をつけたいものです。この辺のところを解りやすく表現しますと以下のようになります。

大規模事業者が資本金1,000万円未満の子会社を新規に設立した場合の例
※設立事業年度から課税売上が5,000万円あったケース 

2つ目は、前期確定消費税額が60万円以下(地方消費税含む)の事業者は中間申告が不要ですが、分割納税の観点から中間申告をしたいという事業者には、中間申告をし、かつ本決算で確定申告をするという、年2回の制度も採用されます。これも、同じく適用時期は26年4月1日以降開始する事業年度からスタートです。表を参考にしてください。 

○建設工事など、契約期間の長いものには経過措置が採られています。即ち、26年4月1日又は27年10月1日以前に契約が成立していても、引渡しや貸付が改正後になるものは、本来は8%ないしは10%であるが、経過措置で旧税率(5%か8%)を使ってもよい事になっています。この辺のところを表にしてみます。

○まず、価格転嫁ですが、中小企業は前に記述した如く非常に困難を伴います。しかし、転嫁をしやすい状況を作る事は可能ですので、消費税の表示として総額表示でなく、外税方式の方が内容が解りやすく、多少は違うのかなと思っています。

○資金繰りですが、仮に価格転嫁できても中小企業では、預った消費税は相当に意識しない限り、その消費税分は手許にはないのが現状です。ではどうすればよいか?その分、預けておけば良いのでしょうが、それもままならないので売上UP、経費節減、売掛金回収の徹底化しかないのです。が、言うのは簡単ですけど実行は非常に不可能なので、そこを突破するものとして予想資金繰り表・経営計画の実現化に向けて、がんばるしかないのです…。今後の状況としては、消費税の未納が今以上に増える事は間違いないでしょう。ちなみに、消費税率アップと運転資金の流れを表にしてみますと、以下の通りです。

○わずかな期間(1年半)での税率変更はシステムにも負担をかけてしまい、利用者にも全てかかってきます。即ち、周辺のコストが増える事を意味しています。この事は、最終消費者に必ずつけが回ってきます。

○ここで、消費税増税分が転嫁できなかった時の事業者の負担は、どれだけかを表にしました。




※上記のシミュレーションはあくまでも一例ですので、条例によっては結果が変わる場合があります。ご了承ください。

○最後に、増税対応チェックリストを記載しますので、参考にしてください。

価格転嫁・価格表示関連

・自社の見積書、請求書等の消費税額の表示方法が内税方式の場合、外税方式の採用を検討しましたか
・レジに税率の変更予約機能があるかについて確認しましたか

資金関連

・増加する納税資金はどれくらいかを試算しましたか 
*次の算式で計算してみましょう。
直近の消費税申告書の確定消費税額(地方消費税額含む)×110(又は108)/105

・増加する運転資金がどのくらいかを試算しましたか
*直近の貸借対照表から大まかに増税により増加する運転資金を算出してみましょう。
{A(受取手形(割引手形控除前)+売掛金)-(支払手形+買掛金)}×
110(又は108)/105-A=運転資金増加額

・価格転嫁できなかった場合等を想定して、利益や業績への影響を試算しましたか

経理実務関連

・自社の会計処理、課税方式を確認し、その妥当性を検討しましたか
*「税抜処理」か「税込み処理」、「本則課税」か「簡易課税」「免税事業者」の確認をします。
・請求書の発行システムの税率変更への対応を確認しましたか
・売掛金や買掛金について、取引したときの税率が正しく確認できる管理方法になっていますか
・消費税の増税に伴う税額計算の実務処理について会計事務所に確認しましたか

そ の 他

・近い将来、設備投資や修繕が必要なものはありますか
*たとえば平成26年3月31日までに行った方が有利か、4月1日以後でも問題はないかといったことも考慮する必要があります。

・駆け込み需要への対応を検討していますか
*消費税率アップに伴って直前の駆け込み需要が予想されます。在庫管理等をしっかり行い、販売チャンスを逃さないように計画しましょう。

・原材料や商品等について増税前の仕入を検討していますか

・遊休不動産など将来売却する可能性のある資産はありますか
*売却する場合、消費税に注意が必要です。

・住宅などの賃貸事業者は増税による経費の増加を吸収できますか
*賃貸料の値上げが必要かどうか検討しましょう。


9月の特集

税務について

今回は、税務上の貸倒損失処理についてお話をしましょう

○貸倒処理とは、債権等が回収不能となった場合、これについて会計上も税務上も費用処理ないしは損金処理をする事です。債権等の例として、表1をみてください。また、決算書と税務申告して与える影響は表2をみてください。

-表1-【債権等の例】
①売上債権(売掛金、未収入金など)
②取引先への貸付金
③従業員への立替金や貸付金
④貸付金に発生した未収利息
⑤敷金やゴルフ会員権など

-表2-【貸倒れ処理の影響】



○更に税務上の貸倒処理の要件として表3を見てください。
-表3-税務上の貸倒れ処理の要件



○税務上、貸倒れとして認められる要件として、表3に表現されている3つのパターンのうちいずれか1つに該当すれば、税務上認められます。最近は、日本経済の低迷もあり、貸倒れ要件が増加傾向にあります。課税当局としては、実は貸倒れと至らないにもかかわらず、あるいは貸倒れの時期を意図的にずらしているのではないかとの疑念を持つ事がしばしばであります。尚に、その辺のところは表4を参考にしてください。俗に言う、紛れ込ませているとの観点で注意深く調査をする傾向があります。この貸倒処理には、自社で最終判断をする場合が多々あります。従って、慎重なる対応が要求されます。

-表4-【貸倒れ処理をする時期】
例えば、債権等がすでに貸倒れの状況にあるにもかかわらず、当該事業年度が赤字であることからあえて貸倒れ処理をせずに先延ばし、利益が出た事業年度に貸倒れ処理を行うようなことは、利益操作とみなされます。



○尚、是非とも揃えておかなければならない資料として、表5を参考にしてください。
-表5-【揃えておきたい資料】




経営について

決算書は経営のカルテだと言う事の説明を続けます

○損益計算書は表1を見てもらうとわかりますが、損益の中味を区分けし、どんな状況で利益(損失)が出ているのか一表で解るようになっています。



○ここから、収益改善のヒントをつかんでとらえていきます。
その1、まずは過去の実績との比較で問題点を洗い出して、改善策を見つける方法です。例えば売上ですと、単価×販売数量に分けられますが、それを詳細に担当者別、得意先別、商品や製品別に観ていく事によって、弱点を見出し、それに基づき販売管理の再構築を図るという事です。

その2、次に実績を分析した後、販売目標を設定するのです。いつ、どのように、どんなタイミングで、誰に、何を、いくらで、とかです。下の表を参考にしてください。


※目標は変えず、目標達成のための方策を変える。

その3、売上に対する売上原価、販売費の見直しです。原価として果たして妥当(無理、無駄がない)であるか、あるいは在庫のからみで、売れないものの在庫が数多くあるのか、発注にダブリがないか等、要は能率・効率を無視したところの動きがないか、をしっかり吟味する事です。もっとも、この困難な時代にあれもこれもとはいかないと思いますので、まずは会社全体の把握をすべく、会社の世に提供する売り(セールスポイント)は何か、それをするための組織作り、人作り、スキル等をしっかりと見渡し、そして各分野別に問題を列挙をし、それを個々に撃破との形で改善していく事が、何よりも重要であろうと思います。


法務について

今回は、従業員が業務中、通勤途中で自動車事故を起こした時の会社の責任についてお話しをしましょう

○従業員が業務中や通勤途中で自動車事故を起こした場合、会社には責任が生ずるのか、またはその車が社用車なのか、マイカーなのかで違いがあるのかについてです。まず、会社は使用者責任があり、運行供用者責任が問われます。従って、被害者は会社に対し損害賠償が請求出来ます。
民法715条、自動車損害賠償法3条参照

○従業員と会社は、使用者責任あるいは運行供用者責任のいずれかによって、被害者は損害賠償を求めてきます。表1参照でこの場合、会社は被害者に賠償するとして、これにつき事故を起こした従業員に求償します。但し、全額とは限りませんので注意してください。表2を参照してください。



(注1)従業員への求償には、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」という制限がつきます。

○では、事故が社用車の場合はどうかと言いますと、社用車ですと会社の事業活動との範囲と、とらえられやすいので、使用者責任を問う可能性があります。

○マイカーですと、表3の事を考慮して業務との関連があれば会社に責任が有りとなります。マイカーでの事故ですが、会社がマイカー利用を容認していれば会社の責任となります。では、通勤途中でのマイカー事故はどうかと言うと、原則責任はありませんが、日常的に容認助長していれば、会社にも責任有りとなります。

-表3-
・従業員の担当職務(外勤か内勤か)
・マイカーの平素の使用状況
・事故発生時の運行目的 等
※この考えは、「運行供用者責任」と「使用者責任」とで共通しています。

○業務外でのマイカー事故は、原則会社には責任がありませんが、そのマイカーが実質的に従業員との共有である等、特別な事情がある場合は会社に責任有りとなります。    

○最後に会社の注意点ですが、今回のケースでは何かと会社責任が問われるので、出来れば通勤業務にはマイカーをなるべく使わない事です。と言っても、現実はそうもいかないので、通勤に使うマイカーについては任意保険に加入させるべきです。例えば、マイカーは通勤以外の業務には一切使わせず、業務への使用も一切禁止する(純通勤用使用)の管理方法ですと、原則として会社は責任がないですが、これもあまり現実的ではないでしょう。

○事故を起こしてしまった場合は、速やかに・敏速に・誠実に・対応するしかありません。

8月の特集

経営について

今回は決算書の見方に注視しましょう

○貸借対照表を見れば、資金繰りに苦しんでいる貸借対照表かどうかわかります。表を見てもらうと解りますが、流動資産の範中に入る売上債権・在庫が現預金に比し多すぎると資金繰りが苦しくなっている事が解ります。と言うのは、売上債権・在庫は確かに過去に売れた金額を表していますが現金ではなく、在庫は将来の売上の元になる部分でやはり現金ではない。

○従って、その間に仕入代金の支払い、借入金の返済、諸経費の支払いをしなければならないが、売上債権・在庫では支払いができません。そうなるとピンチです。よって、売上債権・在庫の過剰は要注意です。

○また、流動負債に目を向けてみると、支払手形や買掛金などがあります。いわゆる掛けにせず現金払いですと、やはり資金繰りが苦しくなるので掛けにすれば資金繰りが楽になります。しかしこれも程度もんです。尚、貸借対照表を表にしてみますと以下の通りです。



会社の多くは、投資や仕入れの支払いを先に行い、売上の入金は後になります。
貸借対照表には、会社のある一時点において、入金と支払いがどの程度あるのか、その入金と支払いは早く来るのか、遅く来るのか、またどの程度の設備を保有しているのか、返さなくてもよい資本がどの程度あるのかが示されています。


税務について

注目される住宅取得等(マイホーム)資金の贈与税の非課税措置についてお話しをしましょう

○24年度税制改正で、いわゆるマイホーム資金が贈与された場合の贈与税の非課税措置が拡充・延長されました(26年末まで)

○親、祖父母が子供や孫のために、マイホーム資金を援助した場合、一定の要件を満たせば一定額まで贈与税が非課税となります。

【図表1】マイホーム資金の贈与の特例の適用要件

①贈与を受ける子や孫は、20歳以上(贈与の年1月1日時点)であること
②贈与を受ける子や孫のその年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下であること
③直系尊属(父母・祖父母等)から受けた贈与であること
(注意)配偶者の親から受けた贈与には適用できません。
④贈与を受けた資金の全額を充ててマイホームの新築・取得または増改築等をすること
(注意)親が住宅を購入して贈与した場合や、住宅ローンの返済資金として贈与した場合には適用できません。 
⑤新築・取得または増改築等をした家屋の登記簿上の床面積※1が50㎡以上240㎡以下であること
※1マンションなどの区分所有物の場合はその専有部分の床面積  
⑥贈与を受けた年の翌年3月15日までに取得・居住すること(または居住が見込まれること) 等々

○今回、従来の一般住宅のほか、省エネ・耐震住宅を取得した場合の特例が創設され、1,500万円の非課税枠が設定されました。



この特例措置は、平成26年末までですが、非課税限度額は毎年、逓減しています。



注1)省エネ・耐震住宅とは、生活用のエネルギー使用量が削減できる、または耐震性能が高いと認められる住宅として指定確認検査機関などが証明を行った住宅をいいます。

尚、この特例を受けるには、申告が必要です。

○尚、この分はいわゆる住宅ローン控除と併せて利用もできます。例えば親や祖父母からマイホーム資金の贈与を受け、特例を使い加えるに、住宅ローン控除を使えば所得税の減税を図れます。



注意点はよく読んでおいてください

【図表5】住宅ローン減税の注意点 

①居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除など他の特例の適用を受けている場合には、住宅ローン控除の適用は受けられません。
②住宅ローン控除は年末残高に対して控除額が計算されるため、繰り上げ返済を行った場合には、控除額も減少します。
③親からのマイホーム資金の贈与額と住宅ローンの合計額が住宅の購入額を上回るようなことがないようにしましょう。  

○上記の他に、相続時精算課税制度との併用で非課税限度額も大きくなります。即ち、マイホーム資金の特例(最大1,500万円)に加えて、父と母の各々から2,500万円まで贈与税が非課税となります。但し、2,500万円を超えた金額には一律20%が課税となります。



この制度は、子供が親からマイホーム資金の贈与を受けた時に限ります。
また、この制度を利用すると、贈与税の基礎控除額110万円は使えなくなるので要注意です。


労務について

残業時間の削減を積極的にすすめましょう

残業というものは、かなり意識をしていないと、いつのまにかしてしまうことが一般的のようです。従って、意識して残業をなくす努力が必要です。

例えば、1週間に1回休肝日ならぬ、ノー残業デーを設けるのも一案です。それと、どうしても残業をしなければならない時は、事前に届出書を提出させるようにし、提出させる事により減少していく方向へと導く事が肝要です。

尚、残業の多い例として以下の表を参考にしてみてください



7月の特集

税務について

今回は、欠損金の繰戻し還付と繰越控除についてお話しをしましょう

○法人税では、当期に欠損金が生じた場合、前期に納税した法人税を戻す方法と翌期以降の黒字から当期の欠損金を控除する方法の2通りあります。

○まず戻す方法ですが、下の方法を見てもらうと法人税を戻す制度が解りますが、現在資本金の金額が1億円以下の中小法人(大法人の100%子会社の中小法人は除きます)と清算中の法人に適用されており、大法人は引き続き法人税の戻しは出来ません。



○この制度を利用するメリットとしては、前期に納めた法人税が戻るので資金繰りが好転するが、デメリットとして戻る税金は法人税のみで、法人地方税・法人事業税は戻らないのと、後に税務調査があります。デメリット・メリットを総合勘案して決めてください。

○次に、欠損金の繰越控除ですが、当期の欠損金を翌年度以降の黒字から差し引くので、翌年度以降の法人税・法人地方税・法人事業税の納税額が減少します。

具体的には

①青色申告書を提出した事業年度の欠損金(青色欠損金)
②白色申告書を提出した事業年度の災害による欠損金(災害欠損金)

が控除できます。

尚、23年度の税制改正で①、②の欠損金の控除期間と保存期間が変わりました。
以下の表を参考にしてください



図表3



(注)資本金の額が1億円超の法人などについては平成24年4月1日以後に開始する事業年度から所得と相殺できる欠損金をその事業年度の所得金額の80%に制限する改正も行われています。

*欠損金が発生した事業年度に係るもの。

○赤字を続けますと、債務がどんどん増えていき、同時に資金の流出もしていく事になりますので、見えてくるゴールは倒産となってしまいます。早急に支払い(原価性のもの、経費、役員報酬)の見直し等、利益体質の組織体強化等、手早く手を打っていく必要があります。


経営について

今回は、決算書はカルテだという事をお話ししましょう

決算書はちょっと見ただけでは、何の事が書かれているのかサッパリ解りませんが、解ってくると見えてきます。例えば、前年に比較して利益金額が増えたにもかかわらず、さっぱり現金が残らない場合は通常、売掛金が増大しており、滞留債権が増加していく傾向にあり、その一方で未払金も増大し、支払いも増えてくるものです。結果、資金繰りの悪化を招きます。ここで、決算書の見方が解れば事前に手が打てるというものです。

尚、決算書イメージとしてB/SとP/Cは以下の通りです。

≪図表1≫ 貸借対照表のイメージ
貸借対照表の借方(左側)には、現預金、売掛金、製品(商品)、材料などの流動資産と、建物や機械などの固定資産があります。

貸借対照表の貸方(右側)には、買掛金や短期借入金などの流動負債、長期借入金などの固定負債のほか、資本金や利益剰余金などを表す純資産があります。



≪図表2≫ 損益計算書のイメージ

損益計算書



損益計算書は、製品(商品)の売上(本業)から、売上に対応する製品(商品)の原価である売上原価を差し引いたものが「売上総利益(粗利益)」です。売上総利益から販売のためにかかった費用や本社経費である販売費及び一般管理費を差し引いたものが「営業利益」です。これが本業から稼いだ利益になります。

さらに営業利益に対して、受取利息、配当金や支払利息などの営業外損益を加味することで、「経常利益」がわかります。この経常利益は会社の経常的な採算性を表します。そして、経常利益に臨時的な損益を加味して、税金を差し引くことで「当期純利益」が表されます。これが、事業活動の成果、会社が稼いだ利益になります。


労務について

中小企業の経営者と自営業者も労災保険に入りましょう

労災保険は労働者が業務中や通勤途中で、ケガ、病気、障害を受けた際、補償をする保険であります。よって、社長、役員、一人親方、自営農家は対象となっていません。

しかし、だからと言って何もないのは不安です。それに対する備えとして条件がありますが、労災保険へ特別に加入する事も出来ます。本来、経営者等が業務中に事故等があっても、その治療代は全額自己負担です。しかし、特別加入していれば労災で補償してくれるので助かります。では、どんな場合に補償されるかと言いますと

①負傷した場合
②疾病にかかった場合
③障害が残った場合
④死亡した場合 

等、具体的にどういう人が加入できるのか下記に列挙します。

○加入できる「中小事業主等」は
①一定の労働者数(注)を常時使用する事業主
②上記①の事業主の家族従業員・役員など



○自営業者や自営農家、家内労働者などの場合は



実際に加入するには、全国の労働保険事務組合に保険事務を委託すれば、同組合を通じて労働基準監督署へ申請となります。

<注>労働保険事務組合とは、事業主に代わって労働保険料の申告納付その他労働保険に関する事務手続を行う団体です。

Check!
契約書には、収入印紙を貼りかつ消印を忘れずにしましょう
収入印紙の貼り忘れ、消印忘れは印紙税額とその2倍相当の過怠税が徴収されます。要注意です!
尚、契約書の印紙税の注意点を以下の表にしてありますので、御覧になってください。




6月の特集

経営について

今回は、金融機関への業績説明の仕方についてお話しをしましょう。

○ 金融機関への説明
昨今、融資申し込みや返済計画変更をした企業に対し、金融機関はその後の状況について詳細なる説明を求めます。

具体的な例で、平成22年度の売上予想額6億円が8掛程度になった事について、震災の影響で一旦落ち込んだが、今後は震災特需が見込める。しかし、原材料の高騰で荒利は悪くなりそうなので、大口だけでなく小口顧客も拾い集め、同時に経費節減に努めていると説明しました。

○ 社長自らの言葉で
上記のような詳細な説明とともに現状分析、改善策、具体的な売上の見通し等、社長自らの言葉で説明する事に金融機関は高い評価をします。


税制改定について

平成24年度税制改正が成立しました。

まず、企業関係について
○ 中小企業投資促進税制の拡充・延長がなされました。
対象資産は、一定の設備投資やIT投資した場合の税額控除と減価償却費の特例措置がなされます。
適用は、平成26年3月31日までの取得・事業使用分までです。

○ 少額減価償却資産の損金算入特例の延長がなされました。
30万円未満の減価償却資産の全額損金算入が2年延長されました。
適用は、平成26年3月31日までの取得・事業使用分までです。

○ 研究開発減税の延長がなされました。
その試験研究を行った費用の増加額に係る法人税の特別控除額、あるいは平均売上額の10%を超える試験研究費の額に係る特別控除額を選択適用できる措置の適用期限が2年延長されました。
適用は、平成26年3月31日までに開始する事業年度までです。

○ 中小企業の交際費等の損金算入特例の延長がなされました
年間600万円までの出費の90%まで損金に算入できる損金算入特例が2年延長されました。
適用は、平成26年3月31日までに開始する事業年度までです。

次に個人関係・その他について
○ 給与所得控除の上限設定
給与等収入が1,500万円を超えると給与所得控除額が一律245万円の上限となりました。
適用は、所得税は平成25年分から、住民税は平成26年度からとなります。

○ 住宅取得等資金贈与の非課税の拡充・延長がなされました。
直系尊属(祖父母・父母)からのマイホーム取得資金の贈与を受けた時は以下のようになりました。
なお、省エネ・耐震性能の高い住宅は、非課税枠が500万円上乗せとなりました。

適用は、平成26年3月31日までとなります。


税務について

減価償却制度改正の影響と対応についてお話しをしましょう。

○ 改正の内容
平成23年度の税制改正で平成24年4月1日以後に取得した減価償却資産の定率法償却率が定額法の償却率の2倍の償却率(200%償却率)に引下げられました。
これまで、平成19年4月1日以後取得分の償却率は、定額法の償却率を2.5倍にした償却率(250%償却率)でした。

基本的な償却限度額の計算方法は同じです。


○ 改正による影響
改正になったことにより、設備投資の初期段階での多額な減価償却費の計上が抑えられるようになりました。下の表の通り、最初の頃は少なめに抑えられていますが後半になると多少ピッチが上がります。全体で観るとカーブがなだらかになっています。下の表をご覧いただければ、わかりやすいと思います。

○ 事務負担軽減のための特例措置
平成24年4月1日以降の定率法が200%に変わる事により、事務が益々煩雑になります。よって、これに関する特例を設け、事務の煩雑さを防いでいます。
この特例は、事業年度が平成24年4月1日を跨る法人・個人事業者については、その事業年度末までに取得した資産については、250%(旧)のままで良い事になっています。
なお、届け出は不要です。下の表をご覧ください。

○ 改正後の定率法償却率
段々と話しがややこしくなってきますが、結局、旧定率法の償却率を含め3種類が存在する事になります。

平成24年4月1日以降に終了する事業年度で既存の250%定率法と200%定率法とが混在します。そこで、償却率を統一するために200%定率法の償却率に変更する事が考えられます。しかし、統一する事によって、残存耐用年数内に償却が終わらない事になります。それを防ぐために残存耐用年数を短くしたうえで200%定率法を適用する事によって、期間内に償却を終らせる事が出来ます。
その際には、平成24年4月1日の属する事業年度の確定申告書提出期限内に「200%定率法の適用を受ける旨の届出書」の提出が必要となります。実に面倒な手続きではあります。表を参照してください。


労務について

総務・経理担当者が知っておかなければならない労務事務の届出窓口についてお話しをしましょう。

○ 従業員が退職した時の届出先
従業員が退職した時、労務関連(社会保険・労働保険)の事務手続きはどこにすれば良いのか。
具体的な事務の例は、以下の通りです。

そして、社会保険・労働保険の届出先機関の一覧は以下の通りです。


次に代表的な手続きと届出書類の一例を表にしましたので、ご覧になって下さい。

なお、ここでいう健康保険協会(組合けんぽ)とは、国が行う健康保険事業を代行する公法人です。中小企業では、同業種の複数の企業が共同で設立した健康保険組合に加入している場合があります。企業は、健康保険組合、政府管掌の健康保険協会(協会けんぽ)のどちらかに加入しています。

○ 経理・総務担当者の皆様へ
最後に労働事務についての実務ポイントとして、以下の3つの柱を押さえておけばわかりやすいと思います。


○ 事前準備項目について
昨年は・・・未曾有の天変地異がありました。
そんな状況の下多くの中小企業も存続の危機に直面させられました。そんな中でも事前の危機管理体制のあったところは最小限の被害に留まりました。
ここは是非とも事前に準備しておきたい 10のリスク対応を表にしました。是非御覧になってください。



○ 自社判定について
次に自社のリスク対応をチェックしてみましょう。以下のリスク表を御覧になってください。

5月の特集

経営について

今回は金融機関が決算書や経営計画をどう観ているか調べてみましょう。


○ 企業の格付けについて
まず金融機関の融資担当部門は企業を俗に言う格付け(自己査定)をしています。では何を観てですが、勿論決算書の数値で、この数値を基にして定量的分析(後で説明:注1)を行います。これに、定性的分析(後で説明:注2)を加味して評価するわけです。




○ 注意すべき科目について
では、上記の件は良しとして一体何を観ているのかですが、特に注目すべき科目として、売掛金といわゆる在庫です。共に真に正味債権なのかどうか十分に検討するわけです。これら科目は直接的日常的資金の源となるものであるからです。後 3期から5期分のa/c科目を比較し動きの増減を観ます。特に仮払金、未払金などの科目は要注意です。詳細は次の例をご覧ください。



○ 融資担当者の知りたい情報について
昨今の経済状況から売上の激減は目を覆わんばかりであります。ただ原因が何か、例えば市場に合ってないのか、単に売り方が悪いのか、値決めが悪いのか、単価が低すぎるのか、生産性が悪く量が足りないのか、品質が悪いのか、必要なところに必要なものが用意できずすぐ品切れになってしまうのか、元々売れるものでない物を売っているのか、宣伝不足なのか等々、しかと原因を追究しそれに対する対策が取られているのかを会社が吟味しているかどうか融資担当者は知りたがっています。

○ 経営計画について
会社の作成した経営計画ですが、要点はその経営計画書で本当に借入金が返済出来るのかどうかに尽きます。キャッシュフロー、B/S、P/Lも確かにそこに視点が置かれているのかどうかを観ます。勿論、いわゆる売り物が市場性あるや否やも吟味する事は当然の事として、これらの資料の肉付け部分として会社の経営者・従業員が一緒になってやる気があるかを知る事も核心部分としてあります。

○ 月次の数値について
今や月次決算が当たり前となっています。依って数字に一喜一憂するのではなく、何故なのか原因を見極め、次なる思索に思いを巡らす資料として観る事が大事であり、積極的に金融機関にも助言を求めるべく門を叩いて欲しいものです。


労務について

前回に続き労務トラブル、特に残業時間・残業代について確認しましょう。

○ 残業時間について
残業時間には2つのものがあります。1つは法定内、もう1つは法定外です。説明しますと、先ず法定労働時間と言うのがあり、1週間につき40時間、1日につき8時間までとされています。(就業時間が9時~17時までの会社の場合)この中で1日7時間までを所定労働時間と称し残りの1時間を法定内残業時間と言い、それを超えた分を法定外残業と言います。

○ 法定内残業代について
法定内残業代の決め方は、取り決めがなければ 時給単価×1.0倍 、あれば取り決めに基づきます。

○ 法定外残業代について
法定外残業代は25%以上の割増となります。

○ 深夜労働について
次に深夜労働はどうかと言いますと、22時より翌朝5時までを指し、法定外残業代の25%以上増の更に25%以上増しで合計50%以上の増となります。

○ まとめ
これまでの説明を表でまとめてみますと解りやすくなります。



税務について

今回はフルに働いていない家族役員、社員の給与についてお話をしましょう。

○ 税務調査の注意点
税務調査の時いつも問題になる事ですが、いわゆる家族役員、従業員で常にフルに働いていない人、ないしは名前だけで実は働いていないで報酬だけ貰っている人達がいつも調査のターゲットにされます。即ち単に所得分散あるいは意図的に必要経費作りをしているのではないかと。これは調査当局側としてはおいしいネタとなるのみでちっとも会社側にとってはメリットがありません。必要にして十分なる注意を払い否認されないよう事実の裏付けをしっかりと保存し、当局に十分に対抗出来るようにしておきましょう。表を見て参考にしてください。



○ 勤務実態は特に重要
特に勤務実態については鋭い追及があります。口頭だけでは絶対に信用されません。可能な限り具体的な仕事の内容、勤務時間(1日の)、支給金額の算定根拠、出勤簿とこれでもかと資料残しをしてちょうど良いくらいと思ってください。まーこんなもんで良いか が命取りになります。次の表を参照してください。



尚、役員に対しては上記の他に次の内容も気に留めておいてください。




4月の特集

金融について

今回は金融円滑化法の再延長と中小企業の対応についてお話をしていきましょう。

○ この法律は中小企業等からの返済条件に関し負担軽減の見地から見直しを図るというものです。従って単に返済が苦しいから条件緩和をと願うものではなく、今後の経営計画に基づき経営改善を図りしかも実現性の高いものである事が条件となっています。

○ 金融機関としては社長(従業員のモチベーションも含め)の経営に対するしっかりとした考え方、実行力、実現力を観ています。

○ 具体的には、例えば経営改善に対する具体的な取り組み方をしっかりと金融機関に伝える必要があります。




労務について

労務トラブル防止のための基礎知識の中の労働時間についてお話をしましょう。

○ 法定労働時間とは
労働基準法(32条)に定められた時間であり、1週間につき40時間、1日につき8時間までと定められています。ここに「まで」と言っているのは、上限を指している事に注意し、個々の企業では自由に変えられません。

○ 所定労働時間とは
これは法定労働時間の中で会社が独自に決めるものです。

○ 休憩時間について
では、休憩時間は何時間必要なのでしょうか?
まず、1日の労働時間に対応して休憩時間を一斉(原則)に与えなければなりません。但し、1日の労働時間が6時間未満の場合は休憩を与える必要はありません。表にしますと次のようになります。



○ 定められた労働時間を超えると・・・
いわゆる残業となります。これも法定内残業と法定外残業があります。これを表にしてみますと、以下の通りです。




○ まとめ
今までの説明を今一度表にしてみますと解りやすくなります。




税務について

今回は1人1回5,000円以内の飲食代の処理について話をしましょう。

○ 5,000円基準について
既に世間では1人1回5,000円以内の飲食代は交際費とならないと知れ渡っています。しかし、それでも税務調査ではもめる場面がいくどかあります。もう1度復習をしてみましょう。

○ 前提条件
まず、このフレーズの前提はあくまで得意先など社外の事業関係者に対する分だという事です。いわゆる社内飲食費はアウトです。

○ 計算方法
次に1人1回5,000円の計算は以下の通りです。

飲食費の合計額 ÷ 参加人数 = 1人当たりの金額
  ㊟計算にあたっての注意として以下のものがあります



○ 社外の人との飲食費の処理
三番目に社外の人との飲食費の処理を具体的に列挙しましょう。



○ 必要事項の記載
最後に領収書の他に以下の事が明確に記入されている必要があります。




特別コーナー

今回、売掛金についてお話をしましょう。

○ 回収体制について
売掛金は本来お金として回収される金額がいくらあるかと表現するものです。ですが、中身がスカスカだったらちっとも売掛金の意味をなしません。ここに常に中身を管理すべく常に相手とコンタクトを取り、正真正銘の売掛金としなければなりません。チェック体制として以下の点に注意を払いましょう。






<平成23年11月30日成立>

○ 平成24年4月1日以降開始事業年度より適用の分

・中小企業の軽減税率引き下げ 18% ↘ 15%   と
・法人税率引き下げ      30% ↘ 25.5%  と
・復興臨時増税 (法人税額の10%上乗せ)     とを 同時実施

○ 平成25年分から適用

・所得税の復興臨時増税実施

○ 平成24年度税制改正大綱

国会で目下審議中(24年1月現在未成立)
・中小企業投資促進税制の延長・拡充
・自動車重量税の引き下げ
・年収1500万円超の給与所得控除の上限を245万に

表で表現していきますと、

○ 現在成立している主な改正事項

○ 臨時増税と法人税率引き上げの同時実施時期



○ 企業では法人税率の10%を3年間上乗せする。

○ 個人では所得税額の2.1%を25年間上乗せする。

○ 住民税についても同様に増税となる





<平成23年12月2日公布・施行>

○ 企業関係

○ イ.法人税率の引き下げについて


※平成24年4月1日以降開始する事業年度より適用

○ ロ.中小企業の軽減税率及びその特例の引き下げについて

 中小法人等は更に軽減税率の特例が15%に引き下げになります。次の表をご覧ください。


※平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始される事業年度に適用

○ ハ.減価償却資産の償却率の引き下げについて

○ 二.欠損金の繰越期間の延長について

 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間が7年から9年へ延長となりました。これは平成20年4月1日以降終了した事業年度に生じた欠損金から適用となります。但し、中小法人以外の法人は欠損金控除額の限度を所得金額の8割までとなりました。

○ 二.の追加分について

 貸倒引当金制度が中小法人等に限定される事になりました。
尚、廃止される特別措置として中小企業等基盤強化税制で
①事業基盤強化設備等の所得
②中小企業者等の教育訓練費に係る特別税額控除制度
他には
③事業革新設備等の特別償却  が挙げられます。

○ 個人関係

○ イ.300万円以下の事業所得者に記帳義務化について

 所得が300万円以下の白色申告の事業所得者も記帳義務が生じて来ました。これは、平成26年1月1日以後においての事業所得者から適用です。

○ ロ.当初申告要件・記載上限の廃止について

 青色申告特別控除、電子申告税額控除等当初申告で使われた記載金額が上限となっていたものが申告後改めてその金額の上限まで使える事になりました。

○ ハ.更正の請求期間の延長について

 税務調査が行われる場合、調査開始日時、場所、目的、調査対象の帳簿書類について事前に通知書が送付される事になりました。調査の結果更正すべき理由がなければ書面にて通知されます。これは、平成25年1月1日以降の調査から適用となります。
 尚、更正期間は次の表の通りです。


※平成23年12月2日以降に法定申告期限等が到来する国税から適用

○ ハ.の追加分について

 個人住民税の退職金に対する減税措置の廃止も決まりました。これは退職所得の所得割額10%軽減の措置がなくなりました。

※平成25年1月から適用

○ 企業関係

○ イ.中小企業投資促進税制の延長・拡充について

2年間の延長となる予定です。

○ ロ.交際費等の損金算入特例制度の延長について

これも同じで2年間の延長となる予定です。

○ ハ.少額減価償却資産の損金算入特例の延長について

これも同じで2年間の延長となる予定です。

○ ハ.の追加分として

研究開発減税も2年間延長です。

○ 個人関係

○ イ.給与所得控除に上限を設定について

給与収入1500万超の場合の給与所得控除は245万円が上限となる予定です。これは、平成25年以降の所得税及び平成26年度の個人住民税が適用です。

○ ロ.住宅所得資金の贈与税非課税措置の拡充について

住民所得等資金の贈与をの非課税限度額の現行1000万が3年間延長となり、省エネ、耐震等の高い住宅は更に500万円上乗せとなり最高1500万円となります。
表で見ますと



※平成24年1月1日以降の贈与により取得する住宅所得等資金から適用となります。

○ ハ.自動車重量税の引き下げについて

 自動車税の本則税率が2500円に引き下げられます。エコカー減税も3年間延長となります。

○ その他

 相続贈与関係では相続税の基礎控除引き下げや税率区分の見直し、贈与税の税率区分の見直し等もあります。


3月の特集

経営について

今回は在庫管理と実施棚卸に注目しましょう。

○ 在庫管理が出来ているか

会社は販売・製造の為、商品・製品・原材料・仕掛品など在庫を所有しています。この在庫の重要性についてお話をします。
まず、御社は以下の如くになっていませんか?



ここで1つでも心配があれば、以下の点を実行しているか、調べてみてください。

○ 在庫管理の原則について

 では、5原則を個別に見ていきましょう。

在庫等の入出庫・移動・廃棄の際、現物と確認し直ちに商品台帳へ「単価」「数量」「金額」を書き入れ、常時帳簿が実際の状況を反映している事実が大事です。


常に整理整頓をし、どこに何があるか、一目で解るようにしておく事です。そうでないとすると、横流し、不良品発生、過剰在庫、探し手間の増加等ロクな事が起きません。


実地たな卸は必ず実行し、出来れば毎月行うのが理想です。出来なければ少なくとも3ヶ月に1回は行いたいものです。これによって帳簿上の在庫表は信憑性が増すというものです。勿論十分な証拠資料となります。尚、他社へ預けてある分も在庫調べの時は含める事を忘れずに。逆に他の会社から在庫を預っている場合は勿論除きます。


帳簿上の数値と実地棚卸在庫の数値とが合わない事がしばしばあります。即原因を調べ速やかに理由を明らかにし、次なる手を打つ事が肝要です。通常は数量誤りや記帳ミスが多いようです。


実地棚卸で発見する、不良品・陳腐化品・滞留在庫はルールに基づき安値売や、廃棄をし速やかに処理してください。放置して置きますと、やがてそれが不正への温床となります。尚、廃棄の時は必ず証拠(写真・廃棄業者の証明書等)を残しておきましょう。


 このテーマについて改めてチェック表を以下に提示しますので参考にしてください。




労務について

今回は社会保険に未加入である事の経営上のリスクについてお話しをしましょう。

○ 経営上のリスクについて

まず社会保険は会社や従業員の事情にはお構いなしで、加入が義務付けられています。さて、会社が加入しない事による経営上のリスクはあるのでしょうか。
昨今の財政切迫の煽りを受け、未加入に対する調査は厳しくなっており 後で保険料の遡及納付があったり、罰金が科されたり、従業員からの損害賠償があったりで経営上のリスクはしっかりとあります。

○ 遡及納付について

 では、どのくらい遡るのかですが、最大で過去2年分となっています。となると、従業員負担分も半分ありますので、その分を従業員から貰わなければなりません。実に面倒な事が起きます。
 逆に2年前から遡って払えという事は仮にもっとその前から払ってないとするとその従業員にとって「年金受給資格期間に満たない時期」がある事により、従業員に不利益を与え、その分の損害賠償を受ける可能性があります。十分なる注意が肝要です。


税務について

今回は消費税の仕入税額控除のルール改正への実務対応についてお話をしましょう。

○ 95%ルールの改正について

23年度税制改正により今まで課税売上割合が95%以上であれば仮払消費税として    計算された金額全てが仮受消費税から差し引けましたが、24年4月1日以降開始する事業年度から課税売上高が5億円を超えていますと、いわゆる「95%ルール」が使えなくなり、個別対応方式か一括比例配分方式かのいずれかでしか仮受消費税から差し引く事が出来なくなりました。表で表しますと以下の通りです。



○ 各対応方式について

では、①個別対応方式 とか ②一括比例配分方式とかはどんな方式なのでしょうか?

①個別対応方式
仮払消費税が何のために使われたのか、その使われ具合によって区分する方法を言います。

②一括比例配分方式
単に仮払消費税全額のうち課税売上高割合の分だけしか仮払消費税が使えない方法です。

 これを表にすると以下の通りです。

○ 非課税売上の把握について

課税売上を知る前に非課税売上は何が該当するのでしょうか。以下に列挙します。

○ 用途区分の重要性について

では、個別対応方式の場合は表の課税仕入高の用途区分が重要となって来ます。特に販売費などは用途区分を厳密にしないと思わぬ納税額となる場合があります。
課税売上高が5億円を超えた場合、この超えた当該事業年度は即「95%ルール」が適用となりますので日頃から個別対応方式も出来るように税務ソフトをセッティングしておく事でいざという時に慌てないで済みます。

○ 特に注意が必要な業種について

いずれにせよ今後は仮払消費税が用途別に大きく3つに分けなければならなくなるので、3つに分ける区分基準の合理性が強く要求されていくものと考えられます。特に不動産賃貸・売買業、工務店、クリニック、保育園などは非課税売上が多いので、課税売上高が95%未満となり、思わぬ納税額となりがちですので要注意です。

○ 今後の動向について

いずれにせよ今後は増税路線へと一直線ですので特例・優遇措置は次々に廃止される方向にあります。十分なる注意を払い思わぬ税額にならないようにしましょう。


2月の特集

税務について

今回は23年度税制改正積み残し分と復興増税についてお話しをしましょう。

○ 法人税について

 実行税率の引き下げ(恒久減税)と3年間の臨時増税との組み合わせで行われます。
平成24年4月から国、地方を合わせたところの法人実効税率が5%下がり、法人税が現行の30%から25.5%へと下がり中小法人(資本は1億円以下)の所得金額のうち年800万円以下の部分に適用される軽減税率22%(特例により18%)が19%(特例により15%)に下がります。
 その上で「復興特別法人税」が法人税率の10%分上乗せさせられます。図表1、2を参考にしてください。
 期間は平成24年4月から27年3月迄の期間内に開始する事業年度で3年間となっています。

○ 所得税について

 所得税は、平成25年分の所得税から「復興特別所得税」として、所得税額の2.1%分が上乗せされます。これは毎月の源泉所得税も同様で源泉徴収する際も通常の源泉税に2.1%分追加徴収し、納付期限までに納付となります。これは25年間(平成49年分の所得税まで)続き、年末調整の対象となります。次の表を参照してください。

 サラリーマンで専業主婦、子供2人いる世帯及び単身者の年間増額の試算は次の表のようになります。

○ 個人住民税について

 個人住民税は一律に課せられる均等割部分を現行の標準税率4,000円(市町村民税3,000円、都道府県税1,000円)に1,000円を上乗せし、5,000円にするものです。これは平成26年6月から10年間となります。図表5を参照してください。そして、図表6は復興税制の今後のスケジュール表です。

今回は引き続き、税務についてのお話をします。

○ 確定申告について

 さて、いよいよ確定申告の時期になりました。以下の人達は確定申告の必要があります。

○ 扶養控除について

 次に扶養控除の注意点を述べますと、以下の表の様になります。

○ 医療費控除について
 一番オーソドックスな所得控除として医療費控除があります。いわゆる治療に必要な医薬品の購入費で、注意点としてインフルエンザの予防接種などの予防費、美容のための整形手術や歯列矯正などの費用は対象になりません。
 医療費控除額の求め方として表にしてみます。

(注1)健康保険から高額医療費、家族療養費等の返金があったり、生命保険等からの入院給付金があった   時には、その金額を差し引きます。
(注2)総所得金額が200万円未満であれば、総所得金額の5%になります。
   尚、電子申告の場合は医療費の領収書の添付は不要ですが、申告期限から3年間は保存が必要です。

○ 寄付金控除について

 今回の東日本大震災に関連して、一定の義援金等が寄付金控除の対象となります。そして、寄付先によっては所得控除ではなく税額控除を選択できるものもあります(住民税とは対象範囲が異なっています)。これらを表にしてみます。

 尚、ふるさと納税は応援したい都道府県や市町村に2,000円を超える寄付を行った時は住民税と所得税から一定の控除を受ける事が出来ます。尚、この時寄付をした地方公共団体が発行する領収書が必要となります。

○ 雑損控除等について

 雑損控除等の注意点として震災等により家屋・家財に損害が出たり、現金盗難に遭った時は、一定の損失額が所得から控除できる雑損控除や災害減免法があります。最寄りの市区町村から罹災証明書を貰ってきてください。また、盗難の場合は即警察へ出向き証明書を貰ってください。

 尚、23年度所得税のチェックリストを掲載しますので、御覧になってください。




1月の特集

経営について

今回は「商いは高利をとらず正直に」についてお話しをしましょう

○江戸時代の商人から、いわゆる家訓や商人道が数多く生まれましたが、当時の時代背景も大きく影響しています。即ち、幕藩体制の時代、社会制度として士農工商がありました。商人は社会の末端に位置していましたが、260年間平和な時代が続いたため、商業が発達し、市場が形成され、「もの」・「かね」が中心となって動くマーケットが出来上がってくるようになりました。この中で、社会の階級制度は必然的に排除され、取引を通じて対等な関係が築かれ、結果的に経済的合理性が追求される事になり、西欧の市民階級の思想に近いものが育成されるようになりました。この利益追求に、武士階級からの反発があり、それに対し思想的・論理的に認めてもらうため、商売の社会的役割を問う必要性がありました。ここに商家の家訓が生まれ、日本の商人道が形成される事になりました。

―中味の実例として参考にしてみてください―

【三井家「宗竺遺書」より】
●商売は決断力を最も必要とす。たとえ一時の損失を忍んで見切るとも、後日に至ってより大なる損耗を醸すに勝る。


(意味)一時的な損失をおそれて見切りをつけないでいると、かえって後で大きな損害になってしまう。その決断力こそ商売で最も大切なことである。


●奢りの気持ちが起きれば家業がおろそかになる。そんなことで商売が繁盛するはずがないではないか。ただひたすら一家睦まじく、わが身の行いを慎み、私中心の考えを捨て、一族を慈しみ、家業を怠りなく務めることが大切である。そうすれば繁昌は子々孫々まで続いていくに違いない。

(意味)上に立つ者に奢りの心が生まれると、事業がおろそかになり、商売が繁盛しない。自己中心の発想や行動を捨てて一族を慈しみ、本業に専念することが事業存続につながる。



●商人は商売に対する普段の心がけがうすく、油断をしていると、他より商売が奪われる。これは戦の原理である。いつも心に緩みなく、家業に懸命になれば、家は栄えるものである。

(意味)商人が家業に専念することを忘れて、気のゆるみが生まれると、たちまちその地位を奪われるのが、商売の原理である。


○例えば「顧客満足」の精神について触れてみますと、大丸創業者・下村彦右衛門は遺訓「主人心得の巻」で、法令遵守・誠実さを説き、顧客がいなくても呼び捨てにしない、小口のお客でも大名のお客でも同等に扱う事を強く戒めています。

○また、近江商人の白木屋創業者・大村彦太郎可全は「商いとは暴利を貧らず利が薄くても良きものを売れ」と説きました。そうすれば、未代まで繁盛すると。

○ここで江戸時代の経営の三大要素「始末・才覚・算用」を説明します。
イ、始末とは…徹底的に効率性を追求した経営をする事。
ロ、才覚とは…常に顧客目線で新しい事にチャレンジし、創意・工夫・努力により臨機応変の経営力を身につける事。
ハ、算用とは…勘定合って銭足らず、にならぬよう会計力を身につける事を言います。



税務について

経理担当者向け法定調書の作成事務のQ&Aについてお話しをしましょう

○提出が必要な法定調書について教えてください
個人の所得を課税当局が把握するため、支払先の会社や個人事業主に給与や特定の報酬・料金の支払先、支払内容、支払金額を明記した書類の事であります。これに基づき個人の所得洩れを発見しようというものです。

表1―法定調書の種類と提出範囲を明記します―

(イ)給与所得の源泉徴収票・支払報告書については表2を参照してください。

※ここで「給与所得の支払報告書」は、その受給者の住所地の市区町村に提出となりますので注意してください。

(ロ)退職所得の源泉徴収票・特別徴収票については、23年中に役員に支払う事が確定した退職手当等も未払いに関わらず全て提出です。これもその受給者の住所地の市区町村に提出です。

(ハ)報酬・料金等の支払調書については、源泉徴収税額の有無に関わらず、支払調書を作成し、提出します。

(ニ)給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を作成する必要があります。これは、以上の6種類の法定調書のまとめ表のようなものです。

※最後に、これら法定調書は当の支払先(社員等)に送付しなければなりません。

経営について

今回は黒字決算に向けて、何かできる事はないかについてお話しをしましょう

○国税庁によると、平成22年度で法人数276万社のうち74.8%が赤字決算となっています。今年は、大震災、EU危機、タイの大洪水と良い事なし尽くしでした。このような状況下、景気も下降へとまっしぐらとなり中小企業を特に直撃しています。もちろん赤字が続けば、待っているのは「倒産」の2文字あるのみとなります。何とか黒字となる算段をする必要があります。

○こんな時こそ全社一丸となって価値観の統一を図り、1+1=2ではなく、3にも4にもなる方法を考えねばなりません。火事場の馬鹿力ではないですが、自分の会社は今、何が出来るか知恵の限りを尽くさなければなりません。要は、従業員一人ひとりが今、何をすべきか真摯に考える事に尽きます。まずは、売上をどう上げるかです。

―事例を書き記しますと―

★売上策

≪卸売・小売業の例≫

イ、バーゲンセール等は実施できないか
ここで注意すべきは、バーゲン商品以外の利益率の低下を如何に影響させないかです。

ロ、季節商品を臨時に販売できないか
季節商品は、特に天候に左右されるので要注意です。

ハ、営業時間の見直しはできないか
ここでは、営業時間の延長で残業代も増加されますので、バランスが必要となります。

≪製造業、建設業やITサービス業の例≫

イ、製造業は、納期の確実性の確保です。依ってスケジュール管理の徹底です。建設業は、今期中の完成をめざして関連部署の協力体制を強固なものにし、休み返上で工事に取り込む事です。

ロ、大規模工事で工期の長い物件やソフトウエア開発の受託業については、工事完成基準ではなく、工事進行基準で売上計上を検討してみる事です。

★次に、利益確保策とは

イ、値引を抑制する方法はないか値引は即、利幅の圧縮に繋がります。何とか方法を考える必要があります。

ロ、利幅の高い商品を重点販売できないか
数多くの商品の中に、何か利幅の取れるものがないかどうか押し出してみてはどうか。

ハ、物品の購入予定を延期できないか
期末までに物品や消耗品の購入を抑え、来期に延ばして黒字作りに精を出すとか。

ニ、臨時社員の人員配置を見直せないか
期末まで余分な人件費がないかどうか、頭数と作業効率とのバランスが取れているかどうか今一度、臨時社員数に目を向けてみてはどうか。

以上、御社のため可能な限り御役に立つ事を御祈り申し上げます。