12月の特集
年末調整の「所得の額」に注意!
昨今の税制改正で、年末調整は非常に複雑になっています。
1. 年末調整で注意する資料は以下の通りです。
●扶養控除等申告書
●配偶者控除等申告書
●保険料控除申告書
●住宅借入金等特別控除申告書
2. 所得の見積額に注意
所得と収入とは違うという事をまず理解しましょう。そのためには、給料の場合の年収の見込額を求める必要があります。要は、この給料の年収というのは、総支払額の事を指していると見れば良いのです。それは、通勤費を含まず、社会保険料や源泉税を控除する前の数字をいいます。その総支払額から、自動的に必要経費を計算した分を差し引いた残りが、いわゆる「所得」です。この方法で所得の見積額を計算することになります。あくまで見積りなので違った場合、年末調整のやり直しか、確定申告をやる事になります。
貸借対照表の現状を確認し、健康体を目指す!
B/Sは一時点のプラス・マイナス財産を表形態で表現しているもので、プラス財産とマイナス財産がバランスよく配置され、自己資本もそれなりの大きさになっているものが健康体の会社とされます。即ち、プラス財産として預貯金と売掛債権・在庫等、1年以内に現金化するものがプラス財産の2/3近くあり、マイナス財産として、借入金・買掛金等がプラス財産(預貯金、売掛金、在庫)の半分程であり、残りが自己資本というのが財務体質として良好と言えるのではないでしょうか。実際には難しく、会社に資金が流れてきても借金の返済のために借金をするようでは健全とは言えない。
●では、具体的にどうであればよいのか!
現金について
前期に対し増加していなければならないが、借入金返済が減少してもそれほど増えてないとすれば、売掛債権の回収が悪いとか、不良在庫が増えているとか、他の資産の増加がバランス悪く増えているとかが考えられる。
売掛金について
確かに売掛金が多いに越した事はないが、一般的に売掛金の残高が年商の1~2ヶ月分であれば問題なしと言われています。これ以上多いと、滞留債権が発生し回収不能分が多く含まれていると考えられる。要は、血液(お金)の流れが悪くなっているという事です。
不良在庫について
在庫は次なる売上につながる分ですが、いわゆる滞留在庫となりますと、それだけ血液(お金)が滞留してしまい、流れが悪くなります。正に動脈硬化の一因となり、最悪は脳梗塞(倒産)にもなってしまう恐ろしいものです。常に観ていないと取り返しのつかない事になります。
固定資産について
固定資産>固定負債+自己資本となりますと、きちんと血液(お金)が流れてなく、血液を新たに生みだしていないものとなっている可能性(逆にお金が死んでいる)があります。早急に処分するなり等、血液(お金)の流れをよくする必要があります。
仮払金、役員貸付金について
要は、会社の営利活動に準拠していない不明の出費が出ている可能性があり、いわゆる会社の財務体質が悪い事を表現しています。早急に処分していく必要があります。言わばこの辺りの科目は公私混同している最たる科目です。早急に対応すべきです。
●問題を認識し改善の道筋はどこに?
B/Sは、会社の財産目録(プラス分+マイナス分)であり、社長の経営力が具現化されたものとしての存在です。資金潤沢、不良債権、不良在庫、不要な機械設備、含み損なしの資産を有しているのが健全であり、理想であります。そのためには、日々の管理(主に売掛・在庫)が大事です。それと、やはり税金をきちんと払える(富を世に還元)企業体にする事が大事な事です。税金をきちんと払えていれば血液(お金)が潤沢に流れていると考えられます。
小さな会社の新規開拓と顧客対応を工夫
営業は仕事の基本。ここから仕事が始まります。では、どうすればよいのでしょう
(1)営業訪問
初めて潜在顧客のところに行くわけです。最初から商品説明してもアウトです。まずは、営業マンの人間性に気に入ってもらう事が一番大事です。即ち、商品よりか人物を気に入ってもらうところからスタートです。要するに人間関係づくりをする事です。
(2)ホームページの活用
HPの目的を明確にする事です。顧客開拓なのか会社案内(人材募集)なのかをはっきりさせる事です。即ち、商品売込みだとした場合、誰をターゲットにし、如何に使いやすいかを知ってもらうかが大事です。
要は、買い手の立場に立ってHPが出来ているかどうかです。価格体・量等、買いやすい商品かどうかです。
(3)ダイレクトメールについて
誰に何を買ってもらうかはっきりさせる事です。
(4)広告
今までの商品に不満がある人たちに、こうすれば満足が得られるという、わかりやすさ・手頃価格がポイントかと考えられます。
(5)看板について
商品の特に知らせたいところを大きく表示する。読むのではなく、見て何をしてくれるという事が即座に解る表現が求められる。
(6)チラシ
折込チラシは注目度が厳しい。普通のとは違うというインパクトのあるものでないと中々見てはくれないのが実情である。
(7)ポスティング
重点地域に限定配付する事を勧めます。
積極的な顧客対応とは?
上記で説明した方法を折り混ぜながら、俗に言う、あの手、この手と一つの方法でなく、複数の手法をとる事が必要と考えます。
11月の特集
パート収入と税金・社会保険の壁
パート収入が、いくらまでだと税金が安くなるかとの問い合わせが増えてきます。仕組みを調べてみましょう
1. 収入と所得の違いについて
(1)収入とは
給与でいいますと、税金・社会保険料等を差し引く前の総支払金額(収入金額)を言います。非課税の通勤手当は含まれません。
(2)所得とは
これは、給与について言えば、自動的に計算される必要経費分があり、これを収入金額から差し引いた残りの金額を所得といいます。
(3)給与収入103万円 = 所得38万円
具体的にこのケースですと、自動的に計算される必要経費分の65万円を差し引くと所得38万円となり、基礎控除38万円ですので差しづめ課税所得が0円となるわけです。
2. 所得税と103万円の壁
(1) 配偶者控除のラインは?
共働きの夫婦で妻のパート収入が103万円までですと、妻は所得税はなし(但し、住民税有り)でかつ、夫の方は配偶者控除が受けられる(但し、夫の給与収入が1,220万円以下に限る)。
(2)では、103万円を超えるとどうなるか?
妻は所得税が課せられ、夫は配偶者控除が使えなくなるが、一定の要件を満たせば配偶者特別控除が受けられる。(妻のパート収入が201万円以下で、かつ夫の給与収入が1,220万円以下の時)。
(3)給与収入以外に収入はないか?
今、給与のみを考慮しているが、もちろん他の所得(例えば、生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金、家賃、原稿料など)がある場合は、当然、他の所得も考慮する必要があり、他の所得も含めて合計所得が38万円を超えれば話は違ってきます。
(4)ネットオークションなどの収入は?
例えば、自身で製作した手芸品や模型などの売却収入は課税対象になるが、年末調整のみの給与所得者が必要経費を差し引いて20万円以下であれば確定申告は不要となります。
3. 社会保険の扶養ライン ~130万円と106万円の壁~
妻のパート収入(給与)が130万円以上だと、夫の社会保険の扶養家族からはずれ、新たに社会保険に加入しなければなりません。また、従業員が501人以上の企業では、パートでも年収105万6,000円で一定の要件を満たせば、社会保険への加入が義務付けられています。大手企業にパートで働く場合は要注意です。
消費税の税率10%の引上げは納税額25%の増加となります!
●予定納税額より増額する確定税額に注意。個人・法人問わず、年の途中で税率がUPしたので、納税の段階で思わず増額になる事があるので要注意です。税率2%の引上げで納税は25%増となります。
●では、今からどうすればよいのでしょう。月次レベルで納税する消費税額の推移を確認する事です。税抜で処理している場合は未払消費税を毎月計算する事です。税込ですと、毎月、 消費税等××/未払消費税等××を計算しましょう。また、予定納税をする時に、売上が急減していれば仮決算して納税額を減らしましょう。
小さな会社が商売で勝つ方法
ヒト、モノ、カネ → 全てに限りのある中小企業は、まず商域をしぼって、まめにその地域に食い込んでいく事が必要と考えます。
1.地域限定の際に気をつける点
(1)仕事時間をよく調べ、時間と内容が合致しているかどうか吟味。要は効率のよい動きをしているかどうか吟味です。
(2)移動時間
仕事時間の45%を超えていたり、同業者より2割多くなっていればもうけは少ない。
(3)社内業務時間
社内業務に充てる時間が30%を超えてはいけません。製造会社や卸会社の場合ですが。
(4)顧客への活動時間
顧客への活動時間を同業者より10%以上多くしましょう。そして、地域別の損益データも時折チェックし、効率よく働いているか確認しましょう。
※要は常に顧客の動向に注視し、それに合わせてスムーズに動いているかの吟味が必要と言えるでしょう。
10月の特集
金融機関はどうして決算書の提出を求めてくるのでしょう?
きちんと借入金を返済しているのに、なぜ毎年銀行に決算書を提出しなくてはならないのか?その理由を理解すれば銀行が決算書のどのような数値を見ているのかも見えてきます。
●企業経営にとって、事業資金の調達先の一つが金融機関からの借入金であり、金融機関においても主要な資産は貸出金、つまり企業向け融資となります。金融機関からすると、融資したお金が企業の事業活動に正しく使われており、滞りなくきちんと返済されることは何よりも重要なことです。そのため、決算書において貸出金の返済の裏付けを確認することが、金融機関の資産を保全するために必要なのです。
●金融行政の方針転換により金融機関の融資は、これまでの企業格付けに代表される財務情報や過去計数などの形式重視から、企業の事業内容や経営計画などの実態を重視した事業性評価に基づく融資姿勢へと変わりつつありますが、形式から実態重視へ変わっても企業情報の基本である決算書を確認する姿勢は今後も変わりません。
●経営者にすれば、きちんと借入金を返済しているのに、なぜ決算書の提出が必要なのかと思うかもしれません。金融機関は資産保全たけでなく、常に融資先の最新の財務データを把握していれば、追加融資の要望にも即座に対応でき業績向上のサポートが可能になります。企業は積極的に金融機関へ決算書を開示すべきです。
【信頼性が高まる決算書とは】
(1)決算書のもとになる会計帳簿の作成において、会計事務所から毎月の巡回監査を通じて指導を受けている
(2)決算書が会計の共通ルールである中小企業会計要領に準拠している
(3)決算書をもとに作成された税務申告書に税理士法第33条の2による書面添付が行われている など
※このような決算書を金融機関へ提出し、対話を深めることで信頼性が高まります。
10月1日をまたぐ取引の消費税率に注意!
2019年10月1日の消費税率引上げによって、取引や請求書が10月1日をまたぐケースが発生します。このような会計処理にあたっては、請求書などに記載されている請求期間や消費税率、消費税額に注意しましょう。
●保守サービス料金の月払い、年払いについては、例えば、月払いですと請求締日が25日と設定した場合「9月26日~10月25日まで」の請求期間とする請求書が発行されます。この場合、計算期間が一つの取引とされ、サービスの完了日が10月25日となり、請求書の全期間が新税率の10%が適用されます。また、月額契約の料金を1年分一括して支払った場合は、その保守サービスが月々完了するものであれば、「4月26日~翌年4月25日」とした場合、4月26日~9月25日分は旧税率の8%、9月26日~翌年4月25分は10%が適用されます。
●2019年10月分の貸借料においては、翌月分の家賃を当月末に支払う契約の場合、2019年9月末に支払う10月分の家賃は、経過措置が適用される場合を除き、新税率の10%が適用されます。
●2013年10月1日から2019年3月31までに賃貸借契約が締結され、2019年9月30日以前からの不動産の貸付については、一定の要件を満たしていれば、不動産賃貸借契約は経過措置の適用を受け、引き続き旧税率の8%が適用されます。また、家主とテナントの間で、経過措置の適用について相違がないように契約内容が一定の要件を満たしているかどうか、「貸付期間と期間中の家賃の額」や「家賃の変更を求めることができない」旨の確認をしましょう。
●2019年9月30日までに物件の引渡しを受けた通常のリース契約については、10月1日以後に支払の場合でも旧税率の8%が適用されます。リース料を支払いの都度、費用計上している場合は、旧税率の8%で会計処理を行う必要があるため注意が必要です。
●電気、ガス、水道、通信料などは、月単位ではなく各事業者が定めた計算期間に従って使用量などが検針され、2019年10月31日までの使用量に基づき支払料金が確定するなど一定の料金について経過措置の適用があり、10月1日以後を含めて旧税率の8%が適用されます。
中小企業の必勝経営術 ~1位づくりの商品戦略~
企業活動の源である粗利益を出す手段といえば、商品や有料のサービスです。中心となる商品やサービスを何に決めるかは事業内容や資金調達の上でとても重要です。
●多くの経営者は、重要商品を決定するにあたって、市場規模が大きな商品を取り扱えば、売上は良くなり利益も上がると考えてしまいます。しかし、このような商品は経営規模の大きな会社が必ず参入しているため、商品に投入される経営力(営業人数、資金など)の2乗に比例するため、小さな会社は大きな会社から圧迫を受けて必ず苦戦します。
●要は、資金をあまり使わない、技術を必要としないなど誰にでも作れる商品には手を出さないことです。その理由は、粗利益に対する比重は資金力が4に対し、戦略知識、戦術技能、仕事時間などは6の割合になります。誰にでも作れる商品の経験測では、従業員1人当たりの年間粗利益額は450万円以下になる場合が多くなります。この額では、わずかな経常利益しか生み出せず、従業員に払える給料が少なくなるため、人手不足の時代の採用は、ますます厳しくなるばかりです。
●商品戦略の目的は、小さな市場において市場占有率1位の商品を作ることです。限りある経営力で1位の商品を作るには、社長の性格や経験、自社の規模、競争相手を踏まえ、1位を目指す重点商品を明確に決める必要があります。
【具体的な商品の探し方について】
(1)社長の性格や社風に合っていて、特徴がある商品
(2)大企業が手を出さない市場規模が小さな商品
(3)同業者が見落としていて誰も手掛けていない商品
(4)葬儀関連の業種など、世の中に必要なものだが大企業が手を出さない商品やサービス など
●最後に多くの経営者は、商品の範囲を広げたり、複数の業種を経営すれば、売上が増加して利益も出ると考えています。競争条件が不利な会社にとって1位を取る妨げになるのが、商品・業種の範囲、営業地域、業界や客層を広げすぎてしまうことです。例えば、商品・業種の範囲を広げすぎると、経営力が分散してそれぞれの商品・業種が弱くなり、かえって業績を悪くしてしまうのです。衰退期に入っている商品は早く撤退するという決断力も必要です。
9月の特集
消費増税前の9月末までに準備すべき経理実務
消費税率の引上げに伴い、10月1日以後しばらくの間は取引や請求業務などにおいて、新旧の消費税率が混在するため、誤りをなくすためのも9月中に売上・仕入などの集計・処理をしておきましょう。
●消費税率引上げ前後において、8%や新税率(10%または軽減税率)のいずれを適用するかは、基本的に売上計上基準に基づきます。売上計上基準とは、商品や製品の販売、サービスの提供に係る売上を計上する日を企業が合理性をもって定めた日(出荷日など)を基準として設定し、継続的に行うものです。
<売上計上基準の例>
・商品等を出荷した日(出荷基準)
・商品等を納品した日(納品基準)
・販売先が検収した日(検収基準)
※出荷基準と納品基準では、出荷から納品までの期間が10月1日をまたぐと、売上に適用する消費税率が異なります。
●自社の売上計上基準の情報が社内全体で共有化されていないと、正しい消費税率を適用した請求書が発行されず、経理事務や消費税の申告に誤りが生じてしまいます。まずは、得意先と打ち合わせを行い、消費税率引上げのタイミングを通知するとともに、社内でも営業担当と事務担当との間で情報の共有化をはかりましょう。
●例えば、25日締め請求であれば、10月25日締めの請求書は、期間によって旧税率と新税率が混在します。
u 9/25~9/30までの期間は … 8%
u 10/1~10/25までの期間は… 10%または軽減税率
※請求書については、9月分と10月分を区分して記載するか、9月分と10月分を2枚に分けるなどの対応が必要です。
●仕入については、9月30日までの仕入を集計し、8%が適用される取引を把握しておきます。商品などの入荷日が10月1日以後であっても、仕入先の出荷日が9月30日以前で、仕入先が8%の消費税率により請求書等を発行した場合は、8%の経理処理等を行う必要があります。
●値引・返品の対象となった商品等の仕入または売上時に適用された消費税率に基づき経理処理等を行います。売掛金や買掛金などについては、補助元帳を整備し9月末で一度集計しておきましょう。税込経理の場合は、旧税率の在庫を把握するため、9月末に実地たな卸を行いましょう。
10月からの領収書の発行と受領の際の注意点
●小売店や飲食店においては、会計時に顧客からレシートではなく領収書の発行を求められることがあります。この領収書についても請求書同様、改正消費税に伴い最低限、区分記載請求書等保存方式に対応する必要があります。特に、手書きの領収書を発行する関与先については、記載項目にもれがないよう注意しましょう。
●10月1日から、小売業や飲食店業が会計時に発行するレシートや領収書については、区分記載請求書等保存方式に対応するため、2つの記載事項を追加する必要があります。
u 軽減税率対象の売上がある旨
u 税率ごとの合計額(税込)
●改正消費税に対応したレジの改修・入替を行っていれば、レジから出力される領収書については、区分記載請求書等保存方式が求める記載事項の要件が最低限満たされているので、特に問題はないと思われます。一方で、手書きの領収書を発行する場合には、既存の様式に必要な記載事項を追記することで、10月1日以後も使用することが可能です。
●売上のすべてが10%である事業者が発行する領収書の場合、区分記載請求書等保存方式では従来の記載事項に加えて、軽減税率対象の売上がある旨と税率ごとの合計額(税込)の記載が必要ですが、消費税率や消費税額、税込・税抜の金額を記載する必要はありません。売上のすべてが10%の事業者の場合、そもそも軽減税率対象の売上がないないため、従来どおりの記載でも問題はありません。注意すべきは、但し書きの記載に雑貨代や文房具代など、軽減税率対象品目ではないことが明確になるような具体的な記載が必要です。
●売上のすべてが8%(軽減税率対象品目)となる事業者が発行する領収書の場合は、「全商品が軽減税率対象」と記載すれば、区分記載請求書の要件を満たします。
●10%と軽減税率対象品目がある事業者の領収書は、例えば、雑貨500円(税込)と軽減税率対象品目である菓子折り1,000円(税込)の売上代金(合計1,500円)の領収書に、但し書きに「お菓子(軽減対象)」と記載するとともに、税率ごとの合計額(税込)の記載として「8%対象1,000円 10%対象500円」と記載します。
●領収書を受け取る際に、領収書の記載事項をもとに税率を区分して経理します。そのため、従業員が領収書を受け取った時に記載もれがあった場合は、その場で追記してもらいましょう。
●令和5年10月からは、適格請求書等保存方式に対応するため、さらに次の記載事項が追加されますので、在庫切れの際に切り替えておきましょう。
u 適用税率
u 税率ごとに合計した消費税額
u 適格請求書発行事業者の登録番号
中小企業の必勝経営術 ~経営の差別化に力をいれよ~
●多数の競争相手がいる中での競争は、ランチェスター法則により「会社と会社の真の力関係は経営力の2乗に比例する」ことから、競争条件の不利な会社が強い会社の商品や営業スタイルを真似ても、2乗作用の圧迫を受けるため、規模の小さな会社は、大きな企業と同じような商品・サービス、営業法では苦戦するのは必至です。中小企業は大企業とは異なった考え方による差別化が必要です。
●経営の差別化には、経営の構成要素(商品、地域、業界と客層、営業、顧客維持、組織、資金と経費など)の目的、目標、戦略、戦術についてそれぞれ差別化を考えていくことになります。
●弱者の戦略ルールにより目標を定めます。ランチェスターの第1法則(接近戦・一騎討ち戦)を重視します。そのためには目標を重要なもの一つに絞り、その範囲を狭くします。次に業界の常識に捉われず、疑ってみることも必要です。時には思い切った革新も必要です。なぜ、この仕事が必要なのかを改めてチェックし、根拠が明確でないものは中止するか、新しい手法を研究し、実際に試してみると良い方法が見つかるかもしれません。
●特定の地域で顧客を集中して作り、顧客占有率1位になるには、目標を一つに絞り、そこに経営力を集中投入します。小さな会社が、いくつも目標を持って経営力を分散させてしまうと、効率が悪くなってしまします。それゆえ、目標を一つに絞り、その範囲を狭くすることで、持てる経営力を集中投入することができるのです。勝つ見込みのない地域からは撤退し、自社にとって有利な地域で勝負するという決断も必要なのです。
8月の特集
キャッシュレス・消費者還元事業への対応と注意点
令和元年10月1日の消費税率引き上げ後から翌年6月30日までの9か月間について、キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)が始まります。
●ポイント還元事業は、消費者がキャッシュレス決済手段(クレジットカード・QRコード・電子マネーなど)を使って、中小企業の小売店、サービス業者、飲食店等で決済をした場合、購入金額の5%(フランチャイズ等の場合は2%)をポイント還元する制度です。
●ポイントを発行するのは、クレジットカード会社などの決済事業者なので、中小企業にポイント発行の負担はありません。さらに、キャッシュレス決済の導入に必要な端末等の費用や期間中の決済手数料については、国が決済事業者へ補助をすることで、中小企業の費用負担を少なくしています。
●原則として、資本金か従業員数のいずれか一方を満たす中小企業がポイント還元事業の対
象になります。ただし、課税所得が15億円超の事業者は対象外です。
<対象となる中小企業 >
【業種】 【資本金又は出資の総額】 【常時使用する従業員の数】
製 造 業 3億円以下 300人以下
卸 売 業 1億円以下 100人以下
旅 館 業 5千万円以下 200人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
小 売 業 5千万円以下 50人以下
●ポイント還元事業の対象となる店舗等において、支払いの手段としてクレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコード決済を利用した場合にポイントが付与されます。
<対象とならない取引>
・有価証券等、郵便切手類、印紙、商品券、プリペイドカード
・自動車(新車・中古車)の販売
・新築住宅の販売
・収納代行サービス、代金引換サービスに対する支払い
・宝くじ等の公営ギャンブル
・給与、賃金、寄附金等
●ポイント還元事業を機にキャッシュレス決済の導入を検討する企業は、まずメリット・デメリットを確認しておきましょう。
<メリット>
・現金の手持ちがなくても購入できるため、顧客の取り込みが期待できる。
・年間3千万人超の外国人観光客等のインバウンド消費の獲得につながる。
・現金管理のリスク(盗難、釣銭間違い、レジ締め、入出金の手間)を削減できる。
・預金や信販取引のデータを会計データと連携することで、入力の手間を削減できる。
<デメリット>
・決済事業者に手数料を支払うため、粗利益が減少する。
・現金売上と比較して入金が遅くなる。
・レジ周りに端末を置く必要がある。
●ポイント還元事業へ参加するには、キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店として登録が必要です。本制度のホームページから決済事業者を選び手続きをご確認してください。
10月からの請求書等の様式変更はお済ですか?
10月1日からの消費税率引上げや軽減税率の実地に伴い、仕入税額控除の方式として「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。
●10月1日から導入される区分記載請求書等保存方式では、現行の請求者東医の記載事項に「軽減税率の対象品目である場合はその旨」「取引金額税率ごとに合計した取引金額((税込)」の記載が求められています。
<区分記載請求書の記載事項>
①発行者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)
④取引金額(税率ごとに合計した対価の額((税込))
⑤受領者の氏名又は名称
●令和5年10月1日からは、適格請求書等保存方式(インボイス方式)が導入されます。適格請求書には、さらに「適格請求書発行事業者の登録番号」「税率ごとに合計した対価の額((税込又は税抜)及び適用税率」「税率ごとに合計した消費税額」を追加記載する必要があります。適格請求書発行事業者の登録番号は、令和3年10月1日以降に」所轄の税務署長に登録申請を行うことで付与されます。
●10月1日以降の区分記載請求書と4年後の適格請求書と2段階での対応が必要となるため、企業にとっては手間が増えてしまいます。適格請求書の記載事項は、区分記載請求書の記載事項の要件を満たしているため、適格請求書に対応した様式であれば区分記載請求書として扱われます。
●レジや請求書発行システムについては、多くのシステムメーカーが4年後を見越して、適格請求書に対応した改修が行われているようですが、自社のシステムも確認しておきましょう。
●自家製の請求書を10月以降も使用する場合
・軽減税率対象品目の販売がない事業者…現行の様式がそのまま区分記載請求書になります。
・軽減税率対象品目の販売のみの事業者…請求書に「全商品が軽減税率対象」と記載すれば区分記載請求書になります。
中小企業は弱者の戦略で勝つ!
●弱者の戦略は、競争条件の不利な会社が業績を良くするための全社的な経営のやり方であり、ランチェスターの第1法則を応用して目標を定め、運営することになります。
<ランチェスターの第1法則とは…>
■攻撃力=兵力数(量)×武器性能(質)
武器性能が変わらなければ、攻撃力は兵力数に比例するという法則で、刀や槍など戦闘範囲が狭い兵器を使い、敵に接近し、一対一で戦ったときに成立します。
●1位の商品や地域づくりを目標に経営を続けていくためには利益の確保が欠かせません。しかし、利益を求め過ぎてしまうと本業とまったく関係のない業種であっても一見儲かりそうに見えると簡単に手を出してしまうことがあります。そこで、利益を生み出すために重要なことは、顧客をつくることです。中小企業は顧客をつくるときに直接の対象となる、商品や営業地域、顧客層において、将来1位になれそうな市場規模が小さいもの(小規模1位)、市場規模が大きいときは、その中の特定部分(部分1位)を目標にしましょう。
●商品、営業地域、顧客層において1位をとるには、会社のリーダーである社長が、他よりも競争力のある強い商品をつくる。同業者より多くの顧客を獲得する。など強い願望や熱意がなければなりません。社長の熱意は1位づくりに必要な情報を呼び込み、従業員にも良い影響を与え、1位づくりの達成により弾みがつきます。
●経営に競争は付き物ですが、ランチェスターの法則では「会社と会社の真の力関係は、ある局面に投入される経営力の2乗に比例する」ことから、経営規模の小さな会社が大きな会社を攻撃目標にした場合、大概ひどい結果になってしまいます。
●どのような会社を攻撃目標にすればよいかというと、社長の出勤が遅く、経営に本気で取り組んでいないようなダメな会社の顧客を狙います。このような会社は、商品の品質が悪い、納期が遅いなど取引に不満を持っている場合が多く、大いに勝てるチャンスがあります。
7月の特集
7月1日から改正民法(相続法)が施行されます!
民法の相続分野(以下、相続法)は、平成30年7月6日に成立し、すでに自筆証書遺言の方式の緩和については、1月17日から施行されています。
●税法では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産の購入資金の贈与の場合に、贈与税の基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる贈与税の配偶者控除の特例があります。この場合、居住用財産の贈与は贈与税を申告した上で行われ、被相続人の財産から切り離されることになります。しかし、改正前民法(以下、旧民法)では、税制上の特例を使って生前贈与された不動産であっても被相続人から遺産の先渡しを受けたものとして考えられ、贈与された不動産の価格が遺産に加算されるため、税法と旧民法では食い違いが生じていました。
●改正法では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与があった場合、不動産については、配偶者の別段の意思表示がなければ「持戻し免除の意思表示の推定」が設けられました。これにより、居住用不動産の贈与については遺産から除外して遺産総額を算出し、各相続人の相続分を計算することになり、配偶者の老後の生活保障を考慮した税法との食い違いも解消されます。
●これまで、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などがあっても遺産分割が終了するまでは被相続人の預金の払戻しができませんでしたが、改正法により共同相続人の各種の資金需要に迅速に対応できるように、遺産の分割前における預貯金債権の行使を認めました。行使できる金額は、相続開始後の単独の遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時の債権額の1/3に当該相続人の法定相続分を乗じた額です。同一の金融機関では150万円が上限です。
●旧民法では、相続人の配偶者(長男の妻など)が無償で被相続人の療養看護(介護)に尽くしても、相続人ではないことから相続財産を取得することはできませんでした。 一方で、他の相続人(被相続人の長女や次男など)は療養看護(介護)を全く行っていなくても、相続人として相続財産を取得できるため、長男の妻との不公平という指摘がされていました。改正法では、このような問題を法的に解決するため、相続人以外の親族の貢献や寄与に応じた金銭の請求を認める制度を創設し、被相続人の長女や次男に対して実際に貢献した相続人以外の親族から金銭の請求ができるようになりました。
●遺留分とは、遺言の内容にかかわらず配偶者や直系卑属(子、孫、ひ孫など)が取得できる最低限の相続分のことをいいます。例えば、相続人のうちの1人に「遺産のすべてを相続させる」という遺言があっても、他の相続人は遺留分を請求することができます。
●旧民法は、遺留分の行使は「遺留分減殺請求権」とされ、権利行使により当然に各遺贈等の対象財産に遺留分割合に応じた権利が生じる(共有)こととされ、対象となる財産が不動産の場合は、共有状態となり大変な制約を受けていました。
●例えば、相続財産に不動産が含まれている場合に、遺留分権利者が遺留分減殺請求を行使し、当該不動産に一方的に「遺留分登記」を行うことが可能でした。他方で、旧民法では、遺留分減殺請求を行使された側は価格賠償(相当額での金銭支払)をすることが通例でした。改正法では、遺留分権利者の請求権を「遺留分侵害額請求権」という金銭請求権に変更しました。
価格表示を確認し、対応を検討しましょう
●消費増税に伴い、商品やサービスの価格に増税分を転嫁した新たな販売価格を設定し、取引先や消費者に表示する必要があります。消費増税直前になって、価格表示への対応で慌てないよう早いうちから値札やメニュー・取引先との契約書や見積書などの内容を確認し、価格表示の方法を検討しておきましょう。
●小売業や飲食業など、一般の消費者を対象とする事業者は、税込価格による総額表示が義務付けられていますが、特例措置として表示価格が税込価格と誤認されない措置を講じていれば税抜価格による表示が認められます。その場合であっても、総額表示への対応が可能な事業者は事務負担等も考慮しつつ、できるだけ速やかに総額表示に切り替えることが推奨されています。
●軽減税率の導入によって飲食業などでは、同じ商品でも店内飲食(10%)かテイクアウト(8%)かによって税率が異なるケースが生じるため、同じ商品に2種類の価格表示を検討する必要があります。もしくは、店内飲食とテイクアウトの税込価格を同じ金額に設定し、それぞれの税率に合わせて異なる本体価格(税抜価格)を設定する方法も認められます。
●事業者同士の取引における価格表示については、総額表示義務はありません。見積書、契約書については総額表示義務はないが、製品やサービス・請負金額に係る消費税額について、どのように記載されているかの確認をしておきましょう。
●契約書については、記載内容をチェックしておきましょう。消費税の記載がないと、税込価格か税抜価格なのかを巡ってトラブルになる可能性があるので、相手先に確認し契約書の見直しや覚書などで「消費税率が改正された場合の消費税額は、改正後の消費税率による」などの一文を表示しておきましょう。
●契約書を作成し直す際は、経過措置が適用されなくなったり、新たに収入印紙を貼付する必要が生じたりするので注意し、その商品・サービスの引渡しが、10月1日以降になる場合は、軽減税率品目以外は消費税率10%で請求することになるため、契約書等には「引渡し時における消費税率が適用される」との明示をしておきましょう。
中小企業の必勝経営術 ~強者の戦略で戦わない~
ランチェスターの法則には、「強者の戦略」と「弱者の戦略」の2つがあり、多くの中小企業は、弱者の戦略で経営すべきですが、まずは強者がどのような手段で経営をしているのかを知っておく必要があります。
●強者の戦略は、商品、営業地域、客層、営業方法など経営を構成する要因に対し、ランチェスターの第2法則をもとに目標を定め運営することになります。
<ランチェスターの第2法則>
攻撃力=兵力数の2乗×武器性能(質)
武器性能(質)が変わらなければ、攻撃力は兵力数の2乗に比例するという法則
で、機関銃や戦車、戦闘機などの射程距離が長い兵器を使い、敵と離れて戦ったと
きに成立する。
●商品または地域で戦略的に1位になれば、従業員1人当たりの経常利益が業界平均の2倍~4倍は多くなります。この力を利用し、強者は1位の商品や地域を増やし、総合で1位になることを目指します。
●強者は、たくさんの商品の中から市場規模が大きなものに力を注ぎ1位を守ります。そして、営業地域や市場を広げ、大都市に支店や営業所をいくつも置いて、多数の販売担当者を配置して1位の地位を守ります。
●商品の幅を広くして、商品市場全体に盲点を作らないようにします。営業地域であれば、範囲を広げて多数の支店や営業所、販売担当者を配置して、地域市場全体を押さえます。これにより売上げが多くなるばかりか、弱者が大きくなることを防いでいます。
●たとえ1位の商品地位を確立しても、年月とともに陳腐化してきます。その隙をついて、弱者が新製品を発売すると逆転される恐れがあるため、資金力を活かして新製品開発に力を注ぎます。
●卸会社は長年の営業活動によって、何社もの販売店や小売店との取引があります。強者は複数の卸会社を利用し、地域市場のカバー率を高くします。すると売上も増え、弱者が大きくなるのを未然に防ぐことにつながります。
●強者のメーカーが卸会社を利用して間接販売をすると、販売店や最終利用者との人間関係が弱くなります。これをカバーするために、テレビや新聞、ネットを使った広告をしたり、人が大勢集まる場所に大きな広告を出して会社の認知度を高めます。
●弱者が業績向上を狙って新製品を発売したとき、それを放置してしまうと弱者が勢いづき、やがて強者の地位を脅かし始めます。このような事態を防ぐため、強者は直ちに同じ商品を発売して、弱者の売上が伸びないようにします。それには多くの経費が必要になりますが、これは1位の地位を守るべく損害保険であり手抜きはできません。
●強者は、市場の範囲を広くする過程で都合の良い会社があれば、その会社に出資や買収することで、弱者を包囲します。この方法は強者の戦略であって、弱者は良い会社が売り出されているからといって、本業と関係ない会社に出資や買収をしてはいけません。
●強者は、生産に必要な機械、土地や工場に資金投資して、重装備な運営をすることで弱点を少なくして弱者がつけ入る隙を与えません。
※強者の戦略が実行できる会社は、わずか0.5%しか存在しません。強者の条件を満たさない会社が、この戦略のまねをすることは思い止まるべきです。
6月の特集
ランチェスター法則による必勝法とは!
大企業が採用する戦略をまねても、中小企業では上手くいくとは限りません。小さい会社ならではの戦略としてランチェスター法則から生まれた「弱者の戦略」があります。
●業績低迷、人手不足が深刻化する中で業績を良くするには、経営プラン、経営の質を高めることが欠かせません。経営を構成する大事な要因を明確にするには難しいですが、会社は粗利益をエネルギー源に生きており、その粗利益は顧客からしか生み出されません。
●経営システムを構成するうえで大事な要因(顧客)が明確になれば、その要因に対して目標を定め、どのように運営していくのかと戦略を立てます。これこそが経営において「社長の経営術」なのです。
●具体的な手の打ち方の手掛かりとなるのが、ランチェスター法則なのです。イギリスのフレデリック・W・ランチェスターは、第一次世界大戦が勃発したのを契に、戦闘における力関係(攻撃力)はどのようにしてきまるかについて考え、科学雑誌に2つの法則を発表しました。
●【第1法則】 攻撃力=兵力数(量)×武器性能(質)
この法則は、刀や槍など戦闘できる範囲が狭い兵器を使い、敵に接近して1対1で戦ったときだけ成立します。そのため第1法則のことを「接近戦・一騎討戦の法則」と呼んでいます。兵力数が少ない方が、兵力数の多い方に包囲されて負けないために、山の険しい所や森が深い所など大軍が行動しにくい所を戦場に選ぶ必要があります。
●【第2法則】 攻撃力=兵力数2×武器性能(質)
この法則は、ライフル銃や機関銃、戦闘機など射程距離が長い兵器を使い、敵と離
れて戦ったときだけ成立します。そのため第2法則のことを「間隔戦、確率戦の法則」
と呼んでいます。射程距離が長い兵器を効率的に使うには、平地で見通しが良い所を
選び、かつ離れて戦いができる所を戦場に選ぶ必要があります。
●ランチェスターの法則は、多くの学者や経営者によって研究された結果、競争条件が有利な会社だけが実行できる戦略を「強者の戦略」、また競争条件が不利な会社が実行しなければならない戦略を「弱者の戦略」と言います。
増税分をきちんと価格転嫁しよう!
●消費税は、製造業者から卸売業者、小売業者、消費者へと製品やサービスなどが流通される段階で販売価格に転嫁され、最終的に消費者が負担する税金です。各取引段階で転嫁された消費税は、事業者が納税することになります。
●2019年10月1日から軽減税率(8%)と経過措置が適用される場合を除いて、消費税率が10%に引上げられます。この増税分を販売価格に転嫁できないと、自社が増税分を負担することになり売上や利益が減少し、資金繰りにも悪影響を及ぼします。
●増税分の価格転嫁について、2019年10月1日の消費税引上げ時に、すべての商品・サービスの価格を一律に引上げなければいけないといった認識を持っている業者も少なくありません。過去の税率引上げの際、税率引上げ以上の値上げとその反動減によって景気が落ち込んだことを踏まえ、政府は「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を公表しました。
●ガイドラインでは、税率引上げ前において、需要に応じて事業者がそれぞれの判断によって柔軟に価格設定することは、事業者の自由であって何ら問題はないとしています。消費者を対象とする小売業や外食業などの事業者については、すべての商品・サービスに対して一律に増税分を価格転嫁する必要はなく、同業者との競合などを考慮し、転嫁しやすい商品など、個別に販売価格を見直すことで、商品全体で増税分を転嫁する方法でもよいとされています。例えば、増税を機に既存商品の改良や新商品開発によって、新価格を設定するなど様々な方法がありますので、自社に合った価格転嫁を考えましょう。
●事業者同士の取引について、小売事業者に製品・サービスを納入する下請事業者等が、しわ寄せを受け適正な価格転嫁ができず、増税分を負担させられるような事態を避けるため、消費税転嫁対策特別措置法によって、小売事業者や下請事業者に対して、増税分の減額や利益提供を求めることを禁止しています。
貸借対照表を把握し、社長自らが説明できますか?
●貸借対照表を見た利害関係者から、資産や負債に大きな増減があった場合、経営者がその理由を把握し、その理由について説明することができますか。経理担当者や会計事務所任せになっていないでしょうか。経営者自身が説明できないと、自社の業況や財務状況を正しく把握していないと金融機関へ不安を抱かしてしまいます。社長自身が決算書をもとに経営実績と資産や負債に大きな増減の理由を説明し、事業計画書をもとに今後の見通しを説明することは、金融機関とより良い関係を築くことにつながります。
●貸借対照表科目の増減要因は何か?
【売掛金】
売上が伸びているときほど、売掛金は増加傾向にあります。売上債権回転期間が長期化していれば、代金の回収ができていない事になります。売掛金に回収が遅延しているものや、回収不能な不良債権がないかを確認しましょう。正常な売掛金であれば、いずれ回収され問題はありませんが、回収遅れによる滞留売掛金であれば、回収サイトの確認や回収遅れの原因をはっきりさせ、運転資金の調達や、その対応策について具体的な説明が必要です。
【たな卸資産(在庫)】
売上が好調な時ほど、品切れを防ぐため在庫を多く持ってしまいます。在庫の増加が売上の増加に合った金額か、売上が減っているにもかかわらず在庫を増やしていないか、不良在庫はないかの確認をします。金融機関には、在庫の増加は売上好調によるものなのか、売れ残りかの説明をしましょう。
【固定資産】
機械の購入などの設備投資を行うことで増加します。売上拡大などの積極的な設備投資なら良いのですが、あまり収益に貢献しないような資産であれば見直しが必要です。その固定資産が、生産性の向上や収益にどれほど貢献できるのかの説明が必要でしょう。
【買掛金】
売上が伸びると仕入も増加し、買掛金の残高も増加します。買入債務回転期間が短期化している場合は、支払いサイトの短期化や現金仕入の増加が要因として考えられます。資金繰りが苦しくなることが予想されるので、今後の対策に関しての説明が必要になります。
【借入金】
借入金残高が増えている場合、短期借入金の増加は、売掛金や在庫の増加による運転資金の借入なのか、長期借入金の増加は設備投資によるものなのかを正しく把握し、返済の見通しを説明できるようにします。
【現金の増減】
過去からの利益の蓄積や損失の累積は、結果的に現金預金の増減に集約されます。経営の本質は投下資本の回収であり、利益が現金で回収されているかを確認しなければなりません。
●損益計算書のように一定期間のすべての収益と費用の対比から利益を表示して経営成績を表すのに対し、貸借対照表は創業から現在までの積み重ねが数値で表されております。そこから会社の体質、経営者の価値観や考え方が見えるとされ、まさに「経営者の顔」とも言われています。
4月の特集
4月から労働時間の把握が義務化されます!
出勤簿への押印だけではダメになります
●事業主(経営者)は、残業時間(残業代)の算定などを行う必要があるため、労働者(従業員)の労働時間の状況を正しく把握しなければならないのですが、労働基準法上は明文化されていませんでした。しかし、4月1日から改正労働安全衛生法が施行され、従業員の健康管理を強化し、労働時間の状況を把握することが必要になりました。
●労働基準法では、労働時間・休日・深夜残業などの規定があり、経営者は労働時間を適正に把握、管理する責務があります。賃金台帳には、労働者ごとに労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入するなど、労働時間の状況を客観的に把握することが求められています。
●実際は、労働時間等を適切に把握・管理できていない事が少なくないことから、平成29年1月に厚生労働省は労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインを策定しました。
【ガイドラインが定める労働時間の状況の把握方法とは?】
① 使用者が、自ら現認することにより確認する。
② タイムカード、ICカード、パソコン使用時間の記録等の客観的な記録。
※ 労働時間の状況を把握するとは、1日何時間働いたかということだけでなく、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を経営者が確認・記録し、これを基に昼休みやその他の休憩なども正しく把握し、確定する必要があります。
●タイムレコーダーや勤怠管理ソフトの導入で受給できる補助金があります!
■支給対象となる取組み(いずれか1つ以上を実施すること)
① 労務管理担当者への研修
② 労働者への研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組み
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、
デジタル運行記録計の導入・更新
⑦ テレワーク用通信機器の導入・更新
⑧ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
消費税軽減税率の実施に伴い、レジ等の対応に補助金を活用しよう
複数税率に対応したレジの導入、受発注システムの改修等を行う中小事業者を対象に、その費用の一部を国が補助する「軽減税率対策補助金」があります。
●軽減税率対策補助金は、2019年10月の消費税軽減税率の実施に向けて、複数税率への対応が必要となる中小企業、小規模事業者等を対象に、複数税率対応レジの導入等・受発注システムの改修等・区分記載請求書等保存方式への対応するシステムの開発・改
修・機器の導入などの費用の一部を補助する制度です。
◇複数税率対応レジ等の導入等(A型)
【補助対象】
・レジ等の本体、対応するレジ専用ソフト等の導入経費
・券売機、
・レジ付属機器(バーコードリーダー、クレジットカード決済端末、ルータなど)
・設置に要する経費(商品マスタ設定費、運搬費、設置費など)
【補助率】
・導入・改修費用の3/4(3万円未満のレジを1台のみ購入する場合は4/5)
【補助限度額】
・レジ1台あたり20万円が上限、券売機は40万円が上限
・商品マスタの設定、機器設置に要する経費の3/4(1台あたり20万円を上限)
・1事業者あたりの上限は200万円
【申請期限等】
・2019年9月30日までに導入・改修・支払いを完了し、12月16日までに申請
(事後申請)
◇電子的受発注システム等の改修等(B型)
【補助対象】
・システムベンダー等に発注し、受発注システムを改修・入替する場合の費用
・事業者自らが、パッケージ製品・サービスを購入し、導入して受発注システムの
改修・入替をする場合の費用
【補助率】
・費用の3/4(他の機能と一体的なパッケージ製品は、初期費用の1/2が対象)
【補助限度額】
・発注システムの場合、1,000万円が上限
・受注システムの場合、150万円が上限
・発注、受注の両方の改修・入替が必要な場合、1,000万円が上限
【申請期限等】
・改修等を指定事業者に依頼する場合、2019年9月30日までに改修・入替を完了することを前提に、6月28日までに交付申請を行い、12月16日までに完了報告書を提出
・改修等を事業者自身で行う場合、2019年9月30日までに導入・改修、支払いを完了し、12月16日までに申請(事後申請)
◇区分記載請求書等保存方式などへの対応(C型)
【補助対象】
・区分記載請求書等保存方式及び適格請求書等保存方式に対する請求書等の作成・発行
するシステム等の開発・改修等を行う場合の費用
・パッケージ製品の導入に要する経費
・対応する事務処理機器の導入経費
【補助率】
・費用の3/4(他の機能と一体的なパッケージ製品は、初期費用の1/2が対象)
【補助限度額】
・1事業者あたり150万円が上限
【申請期限等】
・開発・改修等を指定事業者に依頼する場合(指定事業者による代理申請が原則)、2019
年9月30日までに改修・導入して支払いを完了し、12月16日までに申請
(事後申請)
・自らパッケージ製品及びサービスを購入し導入する場合は、2019年9月30日まで
に導入して支払いを完了し、12月16日までに申請(事後申請)
資金繰りの落とし穴に要注意‼
売上が好調なのに資金繰りが苦しい、業績不振なのに資金繰りに余裕があるなど、売上の入金と、仕入や経費の支払時期にズレが起こります。
●利益と資金が一致しない⁉
一般に、売掛金の回収(入金)は、2.3ヶ月後など期間が長いことが多く、仕入・販管費の支払いは翌月払いなど、売掛金の回収期間よりも短いことがあります。このような場合、買掛金の支払いによって入金よりも先に資金が出ていくことにより、回収と支払いのズレが起こり、利益と資金が一致しなくなるのです。
●売上が急に伸びると仕入も急増し資金不足に?
特に注意が必要なのは、急激な売上の増加や落ち込みがあったときです。売上が急に増えると、仕入も急増するので資金繰りはさらに厳しくなります。その結果、運転資金を確保するために、金融機関からの借入れが必要となってしまいます。
●売上が急に落ち込むと一時的に資金に余裕が生まれる?
売上が急に落ち込んだ場合は、仕入も減少し買掛金も減少します。買掛金の支払い時に、順調に売り上げていたときの売掛金が回収されてくることで、一時的に資金繰りが良くなるということです。
●このズレから、業績の落ち込みへの対応が遅れたり、手元資金が増加したため無駄な出費をしてしまうことがあります。このように利益と資金が一致しないことを理解し、売掛金の回収を短期化したり、回収期間の短い得意先の取引を増やすなどの対策が重要です。
3月の特集
決算を機に財産の状況を確認・整理しましょう
滞留債権や不良在庫、過大な固定資産、増加する借入金などで自社の財務体質を悪化させないよう、日頃の売掛金や在庫管理について適切に処理することが必要です。
●売掛金の回収遅れは、資金繰りの悪化を招くため滞留していないか確認し、その回収について検討します。例えば、再請求書や督促状を送るなどして回収に努める、回収が困難で債権を放棄する場合は、決算日までに「債権放棄の通知」を相手方に発送します。
また、得意先の資産状況、支払能力等から、債権の回収ができないのであれば、税
務上は貸倒損失として処理することができます。売掛金の中で、すでに倒産・破産した会社の債権が残っている場合は、その事実が生じた事業年度に処理します。
●固定資産は、売却や除却が必要か確認します。すでに存在していない廃棄済の機械や車両等が帳簿上存在したままになっている分については除却損を計上します。また、壊れてしまった機械装置や器具・備品についても、決算日までに破棄し、処分業者から取得した破棄証明書を保存しておきます。
●仮払金はあくまで一時的に使用する勘定科目なので、未精算のものはすぐに精算して、取引内容に見合った適切な勘定科目に振り替えます。立替金においても、取引先が負担すべき引落手数料や運送料、従業員の雇用保険料など会社が一時期に立て替える勘定科目ですので、確定した金額で計上して金銭によって必ず回収しましょう。
●日頃から適正に会計処理する体制が必要です。まずは、売掛金管理を徹底し得意先ごとに分析して、2~3か月も遅れているなんてことがないように管理しましょう。滞留債権においては、売掛金を発生日ごとに分析を行い滞留状況を確認してみましょう。
●定期的に在庫チェックをして、過剰在庫、商品の劣化・陳腐化など在庫の状態を把握し、適切に管理するためには定期的な実地たな卸が必要です。実際に倉庫などに出向き、現物の数量を数えたり、商品の状態もチェックしましょう。
●仮払金や立替金などは、月次決算時、遅くても期末の決算までには必ず精算して、貸借対照表の資産の部に仮払金等の残高が計上されないように努めましょう。
税率引き上げ後も8%の税率が適用となる取引とは
2019年から10月1日から、消費税率が10%に引き上げられますが、一定の取引については引き上げ後も現行の8%の税率が適用される経過措置があります。
●税率引き上げの半年前までに契約すれば経過措置が適用されるもの
【請負工事等】
建設工事や大型機械の製造請負(受注生産)など、完成・引渡しまでに長期間を要するもので、3月31日までに契約し、10月1日以後に完成・引渡しとなる場合、経過措置として8%の税率が適用されます。ただし、マンションや建売住宅の販売は完成した物件を販売するだけなので経過措置の適用はありません。
【資産の貸付け(家賃、リースなど)】
・9月30日までの家賃 … 9月分の家賃を10月に受領した⇒8%
・10月1日以後の家賃 … 10月分の家賃を9月に前家賃として受領した⇒10%
※次に該当する場合は、経過措置として8%の税率が適用されます。
① 3月31日までに契約し、9月30日までに貸付けを開始
② 10月1日以後も継続して貸付けている
【指定役務の提供(互助会や冠婚葬祭の施設提供など)】
葬儀や結婚式に備えて、毎月一定額を積み立てる冠婚葬祭互助会の契約について、時期をあらかじめ定めることができないことから、実際の冠婚葬祭が10月1日以降であっても、8%の税率が適用されます。
① 3月31日までに契約し、9月30日までに対価の全部または一部の支払いを受けること
② 契約に係る役務の提供の額が定められていること
③ 対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
【有料老人ホームの入居一時金】
終身入居契約については、経過措置として8%の税率が適用されます
① 3月31日までの契約で、9月30日までに入居している
② 入居期間中のサービス料が一時金で支払われるもの
③ 一時金の額の変更を求めることができないもの
有給休暇の取得が義務化されます!
労働基準法の改正によって、4月1日から年10日以上の有給休暇の取得の権利がある従業員に対して、会社は最低5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられます。
●現行の有給休暇制度は、6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員に対して、会社は勤続年数に応じた有休を付与しなければなりません。しかし現状は、繁忙であることや会社や同僚への遠慮、休みづらい雰囲気などでなかなか有休が取得できないでいました。改正では、年10日以上の有休を取得できる従業員に対して、そのうち5日分は必ず取得させることが会社に義務付けられました。
●対象となる従業員は、「年10日以上の有休が付与された従業員」で、正社員だけでなく、契約社員やパート・アルバイトも義務化の対象になります。なお、違反した場合は、従業員1人あたり30万円以下の罰金が科せられます。会社側は、各従業員の有休の取得状況を把握・管理するため「年次有給休暇管理簿」を作成することが義務付けられました。
●では、どのように取得させればよいのでしょうか?
【個別指定方式】
従業員ごとに有休の消化日数を定期的に確認して、5日未満になりそうな従業員がいれば、その意見を尊重し有休の取得日を指定する方法です。
【計画的付与制度の導入】
会社が計画的に有休の取得日を指定する方法で、企業の実態に合わせて様々な付与の方法があります。
① 全社一斉に特定日を有休にする
… 有休の指定日を全従業員同一の日にする方式で、製造業どの操業を止めて全従業員を休ませる会社に活用しやすい方法。
② 部署ごとに有休をとる
… 部署、班・グループ別に交替で有休を指定する方式で、流通・サービス業など定休日を増やすことが難しい企業に活用しやすい方法。
③ 個人ごとに有休取得日を決める
… 従業員一人ひとりの有休の取得日を、あらかじめ決めておく方法です。例えば、個人別に夏季・年末年始の他、誕生日休暇などを指定する。
2月の特集
外部環境の変化を分析し、新しく自社の戦略を考えよう
AI技術、人口減少、外国人労働者など外部環境の変化が自社にどのような影響を及ぼすかを考え、経営改善の方向性を探っていくことが重要となります。
●社内で価格改定やコスト削減などを行う場合、企業内部からの発想によることが少なくありません。しかし、AI技術の進展や外国人労働者の受け入れなど外部環境が大きく変化する中、経営に及ぼす影響は技術革新により自社の商品の売上が大幅にダウンしてしまったり、人手不足により仕事の依頼を断らざるを得ない、またデフレによる消費者の低価格志向が進むなどの影響を受けてしまいます。
●外部環境には人口減少やデフレ、技術改新、制度改正などのマクロ的な環境だけでなく、自社や自店舗の商圏・周辺事情の変化、取引先や競合他社など身近なミクロ的な環境もあります。ミクロ的な要因とは、自社や自店舗がある地域の周辺人口や労働力人口の動向、周辺の世帯層はどれか、近隣に大手資本のチェーン店が出店しないかなどです。
●SWOT分析とは、自社の現状を知るために自社を取り巻く環境を外部環境と内部環境に分けて分析する手法です。市場の変化を知ることが現状分析の出発点となります。
まずは、機会と脅威の外部環境を抽出したら、つぎに自社の強み、弱みの内部要因を洗い出します。
・機会(O)…自社にとって、有利な・安全な・役立つ市場の変化は何か?
・脅威(T)…自社にとって、不利な・危険な・負担増となる市場の変化は何か?
・強み(S)…自社が他者よりも優れた・勝てる・得意なところは何か?
・弱み(W)…自社が他者よりも劣る・負ける・苦手なところは何か?
●このようにSWOT分析を活用すれば、外部環境の機会と内部要因の強みを組み合わせて積極的攻勢に出たり、差別化戦略をとったり、弱みを改善したりと新しい戦略の検討ができるようになります。
軽減税率の導入で、請求書・レシートの記載に注意!
2019年10月に導入される軽減税率制度によって、事業者が複数の税率を把握し区分するために、請求書等の様式変更が必要になります。
●税務申告における適正な消費税額の計算のため、売上・仕入について、8%の軽減税率が適用されるものと、10%の標準税率が適用されるものをそれぞれ集計し、区分して記帳する必要があります。
(1)「区分記載請求書等保存方式」
2019年10月から2023年9月末めでの間は、従来の「請求書等保存方式」を維持しつつ、区分経理に対応するための措置として「区分記載請求書等保存方式」が導入されます。区分記載請求書には、現行の請求書等の記載事項に加えて、「軽減税率の対象品目である場合はその旨」「税率ごとに合計した対価の額(税込)」を記載しなければなりません
~現行の請求書等の記載事項~
① 発行者の氏名または名称
② 取引年月日
③ 取引内容
④ 取引金額(税込)
⑤ 受領者の氏名または名称
~区分記載請求書等の記載事項~(現行の請求書等の記載事項に加わります。)
① 取引内容 [軽減税率の対象品目である場合はその旨]
② 取引金額(税込) [税率ごとに合計した対価の額(税込)]
(注1)上記の記載がない「区分記載請求書」を受けとった場合、受領者は、取引事実に基づいて追記することができます。
(注2)免税事業者も「区分記載請求書等」を交付することができます。
(2)「適格請求書等保存方式」
2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式」では、区分記載請求書等保存方式の記載事項に加えて、「適格請求書発行事業者の登録番号」「税率ごとに合計した消費税額」などを記載します。
~適格請求書等の記載事項~(区分記載請求書等の記載事項に加わります)
① 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
② 税率ごとに合計した対価の額(税込または税抜)および適用税率
③ 税率ごとに合計した消費税額
(注1)適格請求書は、所轄税務署長に申請し、登録を受けた「適格請求書発行事業者」のみが発行することができます。
平成30年分 所得税の確定申告の注意点
個人事業主や不動産オーナーなどは確定申告が必要ですが、サラリーマンなどの給与所得者の大半は確定申告の必要はありません。しかし医療費控除や雑損控除を受ける人、また生命保険の一時金などの収入がある人は確定申告の必要があります。
●所得税の確定申告が必要な人
・個人事業者
・給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
・給与を2か所以上から受けている人
・一定額の公的年金を受け取っている人
・同族会社の役員やその親族などで、会社からの給与のほかに貸付金の利子、店舗・工場などの賃貸料、機械などの支払いを受けている人
・雑損控除、医療費控除、寄附金控除の適用を受ける人 など
(1)給与収入の他に、フリーマーケットやネットオークション、または動画投稿収入など、所得金額が20万円を超える場合、雑所得として確定申告が必要です。
(2)株式の売買で得た利益や、譲渡損を翌年以降に繰り越す場合は確定申告が必要です。また、上場株式の配当所得がある場合、確定申告をすれば所得税が還付されるケースもあります。
(3)ふるさと納税の返礼品は一時所得となり、一般にふるさと納税額の30%程度が返礼品の額とみられています。一時所得は50万円までの特別控除額を差し引いて計算しますが、ふるさと納税の返礼品以外に生命保険契約の満期金など他の一時所得がある場合、合計して50万円を超えるときは確定申告が必要になります。
●個人事業者は事業収入と必要経費の範囲に注意
個人事業者の儲けは、事業による収入から必要経費を控除して計算するため、正しく計上する必要があります。収入金額の集計は発生主義で行うため、1月1日~12月31日までの請求金額の合計が収入金額となります。1年間に回収した金額が収入金額ではないので注意が必要です。同じく仕入などの必要経費においても発生主義で集計します。
(1)事業収入になるもの
・その事業から生じた売上金額
・商品を自家用に消費したり贈与した場合
・従業員への貸付金の利子
・仕入割引やリベート収入
・空箱や作業くずなどの売却代金
・商品などの棚卸資産について支払われる保険金や損害賠償金
・金銭以外の物や権利などによる収入
(2)個人事業者が支出した費用は、販売した商品の仕入代金をはじめ、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費などの販売費・一般管理費や事業に必要な費用であれば業務上の経費になります。必要経費とならないものは、自分や家族の生活費、医療費、娯楽費など事業に必要のない支出です。例えば、家族で食事に行った費用、事業主自身の生命保険料、自宅部分の火災保険料、住宅ローンの利息などです。
(3)個人事業者は、店舗と住宅が併用で、自動車も事業とプライベートで使用するなど、家事費と事業上の必要経費が混在している費用があります。これを家事関連費といい、店舗併用住宅の水道光熱費や地代家賃などがこれに該当します。家事関連費も原則は必要経費にはなりませんが、業務上必要な部分を明らかにし、合理的な方法で按分できる場合は、事業に必要な部分については必要経費になります。
1月の特集
企業存続のために必要な最低限の利益を生み出すこと!
●企業の決算書(損益計算書)の利益を見て儲かっていると思いがちですが、この利益は計算上、売上から費用を差し引いた金額がプラスであるという意味で、現金が増えているという意味ではありません。
●売上も費用も全て現金で取引されていれば、利益と現金の収入・支出は一致するのですが、実際の取引では売上や仕入が掛けで取引されることが多く、利益とキャッシュ・フローが一致するとは限りません。利益に関係なく、会社の現金が不足すれば会社は破綻することになります。
●利益は企業の外部からしか獲得することはできません。お客様から商品の注文をいただき、その代金が回収できたときに、はじめて利益が生じるのです。したがって、社員が意識して利益を生み出す事に力を入れなければ、社員はただ忙しいだけで、その活動に要した時間等は、利益として回収されないことになってしまうのです。
●では、利益の役割とは?
(1)事業の妥当性を評価する
自社の商品やサービスが本当に顧客から喜ばれているか?また、自分たちの仕事を評価するための一つの指標が利益だととらえることもできるでしょう。
(2)事業活動におけるリスクをカバーする
経済活動は未来に焦点を合わせているため、リスクは避けられないものです。そして経済活動は長期間にわたるため、そのリスクに備えるには毎年、利益を出し、現金を増やし続けるように経営努力をすることが必要です。
(3)設備投資のための資金調達の手段
利益は投資資金の源泉となり、金融機関から借り入れを行う際の定量的な評価の一因となります。利益が外部資金導入の際に有利な条件を引き出す要因となることで、経営革新と事業の拡大に必要な資金調達を可能にします。
軽減税率はすべての事業者に影響!
2019年10月1日からの消費税率10%への引き上げと同時に軽減税率制度は、飲食料品を販売する事業者だけでなく、すべての事業者において日々の取引や経理にも影響があります。
●軽減税率は、飲食業や小売業、食品卸や食品製造業など飲食料品を販売する事業者だけでなく、ほとんどの事業者に影響します。事業者は飲食料品・新聞に適用される8%の税率(軽減税率)と、それ以外に適用される10%税率(標準税率)に分けて、商品管理や経理処理を行うことになります。
(1)飲食料品を販売する事業者
税率ごとに区分した請求書・領収書の発行が必要になります。経理処理では、請求書等に基づいて売上や仕入を税率ごとに区分して帳簿等に記帳しなければなりません。スーパーやコンビニのように飲食料品やお酒、日用雑貨などを販売する小売業は税率を分けた領収書・レシートを発行し、税率ごとに区分して経理処理をします。精肉店や青果店のように肉や野菜・果物だけを販売する事業者であれば、売上はすべて軽減税率の対象となるため、税率は8%のみとなります。
(2)飲食料品の販売がない事業者
商品の仕入、販売のいずれも標準税率の10%のため、軽減税率の影響はないように思われがちですが、顧客や社員用のコーヒーやお茶などの購入費や会議時のお弁当代、新聞の購読費などには軽減税率が適用されるため、これらを 経費として計上する際に、税率ごとに区分経理する必要があります。
(3) 免税事業者
軽減税率の導入後も、これまで通り消費税が課税されないため、消費税の申告や納税を行う必要はありません。しかし、取引先や納品先が課税事業者の場合、区分記載された請求書の発行を求められる場合があるため、免税事業者でも対応を検討しなければなりません。
●軽減税率の実施に備えて確認・準備すべきこと
① 軽減税率の対象品目があるかどうかを確認する。
② レジや受発注システムが軽減税率に対応するかをメーカー等に確認する。
③ 区分経理等、経理処理の変更に対応した会計システム等の導入・改修・入替が必要かどうかの確認をする。
④ 請求書・領収書の様式の変更について確認する。
平成31年1月13日から“自筆遺言”が変わります!
遺言制度が見直され、自筆証書遺言の作成要件の緩和や、法務局での保管制度の創設が行われました。
●遺言とは、作成者の死後に内容が公開されて有効になるため、あらかじめ書き残しておく意思表示です。遺言には民法の定める一定の方式に従って作成されなければ、法律上の効果は生じません。
【遺言書の種類】
■自筆証書遺言…その全文、日付、氏名を自書し、押印した遺言
■公正証書遺言…公証役場において、証人や公証人の立ち合いのもとで作成される遺言
■秘密証書遺言…遺言者が署名、押印の上、封印した遺言書の存在のみを公証人が証明した遺言
●遺言のうち自筆証書遺言を作成するには、添付する財産目録を含め全文を自書しなければなりませんでしたが、改正後は添付する相続財産の目録については、パソコンで作成した目録や通帳のコピー、登記事項証明書など自書によらない書面を添付することによって自筆証書遺言を作成することができるようになり、作成時の負担が軽減されます。ただし、目録等のすべての頁に署名・押印が必要です。
※パソコンによる財産目録の作成は、平成31年1月13日の施行日以降に行いましょう。施行日前のパソコンでの目録作成は、改正前の民法が適用され無効となってしまうので注意して下さい。
●法務局で遺言書が保管可能になります!
従来の民法では、遺言の保管方法について特に定めがなく、自筆証書遺言は自宅で保管されることがほとんどでした。そのため、遺言書の紛失や作成したことを忘れてしまったり、相続人によって遺言書が破棄、隠匿、改ざんされてしまうなど、相続争いに発展してしまうケースが多々ありました。このような問題に対処し、自筆証書遺言を利用しやすくするため、新たに遺言書保管法が創設され、封をしていない自筆証書遺言を法務局で保管する制度が整備されました。
●遺言者本人が、遺言書を法務局に持参し、本人確認後に遺言書とともに、画像データとして保管されます。保管後に遺言者本人はいつでもこの遺言の内容を確認したり、新たな遺言を預け直したりすることができます。
●遺言者の死亡後には、相続人や受遺者は遺言書の閲覧、データ保存された遺言書の画像情報等を証明する書面の交付を請求することができます。また、遺言書の閲覧がされた場合や遺言書の画像情報等を証明する書面が交付された場合、遺言書が保管されている旨が他の相続人に通知されます。